銀座の名店「馳走 啐啄」、「日本料理 ときわ」と改名し、新天地へ。

銀座の名店が西麻布へ

日本料理、銀座の名店が生まれ変わる。銀座から西麻布へ所を移し、名前は「馳走 啐啄」から、その名も「日本料理 ときわ」へ。「啐啄」の「啐」は鳥のひなが卵の殻を破って出ようと鳴く声、「啄」は母鳥が殻をつつき割る音。禅宗で、導く師家と修行者との呼吸がぴたりと合うことを言う。そこから、またとない好機の喩えに使う。「ときわ」とは、「永久に変わらないこと、また、そのさま」。店主の西塚茂光は銀座で約二〇年、食材と真摯に向き合い、奇を衒わず、しかも創意に富んだ日本料理を作り続けてきた。また、女将の西塚紀恵子が目を配り、穏やかで心地よい時間を過ごせると評判を博してきた。春夏秋冬の自然の恵みを生かした料理を求めて、大勢の常連に愛されてきた。店主は昨年還暦を迎えたが、これを機に三〜四年前から温めてきた計画を実行に移すことに。「自分のスキルをさらにアップして、新しい店をつくりたい」と考えたのだ。

「日本料理は五感すべてでいただく料理」と店主は言う。

新店で出す料理は、その言葉どおり、五感で味わい、楽しめるよう、全身全霊を込めた。その土台には、四〇年間培ってきた料理人としての知見と、二五歳から表千家で茶道を学んできた茶人としての美意識と、もてなしの極意がある。

「さらに研鑽を深め、これからの一〇年は若手の育成にも力を尽くします。スタッフ全員の意識と技術が高まれば、店は自ずと成長できると考えています」。お茶で培ったセンスは空間に、サービスにも生かされている。

「しみじみ美味しい」を目指す。

料理はよりシンプルに、丁寧に。食材への感性や調理法、盛りつけまで、これまで以上に研ぎ澄まされて登場する。銀座の店を閉じ、新しく西麻布に開店するまでのタイムスケジュールが、新型コロナによる自粛期間と重なったことで、予期しなかった多くの時間が生まれた。これを利用して、店主は若いスタッフたちと毎日、料理の研究に没頭し続けた。何十種類もの塩を取り寄せ、食材や調理法との取り合せを研究したり、食事に合うお茶の飲み比べをしたり。そして、日本料理の土台であるだしも、いままでない味わいに。「ときわ」では、だしそのものが変わる。「お椀は、私にとってメインディッシュです」と、店主は言い切る。新しいだしは、味わいが複雑に、奥行きがより深くなった。ワッと驚くようなインパクトのある味ではない。ほんの少し離れたところにおいしさがある感覚。それを見つけたときの感動はひとしおだと店主は言う。この「淡味」は、日本人の味覚の本質。このような「しみじみ美味しい」を目指していく。

「八寸」と「塩釜」で華やかに、楽しく。

料理はコース一本のみだ。ただし、「少なめ」や「季節のおいしいものをおまかせで」とのリクエストには喜んで応える。先付けから始まるが、コースの流れの中にはピークが幾つかある。そのひとつが、「啐啄」時代から出していた「八寸」だ。新店では、大きなお盆や器に華やかに盛り込む。どの料理も季節感を大切にしているが、とくに八寸は花や葉もあしらい、楽しげに、そしてきらびやかに。季節をしみじみ感じられる。圧巻は「塩釜」。食材は季節ごとに変わるが、初夏には車海老を昆布で巻いて奉書で包み、卵白と合わせた塩でさらに包み、焼き上がった塩釜を客に割ってもらう。昆布と海老の甘い香りが立ちのぼり、歓声が上がることだろう。「ときわ」のスペシャリテのひとつだ。

モダンな数寄屋造りでおもてなしの心を表現。

料理はもちろんのことながら、「ときわ」の自慢は空間。設計者としてだけでなく数寄屋大工としての経験も持つ、建築家・佐野文彦氏に設計を依頼。数寄屋造りは、虚飾を避け、内面を磨いて客様をもてなす。茶人の精神性を反映し、質素な中にも洗練された意匠の建築。自然の素材を使うのが基本だ。霧島杉の一枚扉を開けると、焼杉、和紙、黒皮鉄の三つの素材で作られた、モダンな空間が迎えてくれる。カウンターは吉野檜の一枚板。赤松や椿、吉野杉、欅、栗など様々な素材が随所に使われている。見上げれば、個室には見事な網代天井。壁は聚楽壁、床は三和土。テーブルも奈良の欅や檜を使った特注品である。「ときわ」で過ごす時間をより心地よく感じていただきたい。そんな店主のおもてなしの心が生きている。

「ときわとは、永久不変を意味しますが、『常盤』『常磐』と書き、冬も緑を絶やさない松などの常緑樹のことも指します。焼け野原で最初に芽を出すのは松とか。後進を育てることも、これからの私の課題です。『日本料理ときわ』の料理長は、松本一樹が務めます。
私は主人として毎日お店に立ち、お客様をお迎えいたします」と店主・西塚茂光は話す。銀座の名店が目指す新たな領域、その舌で確かめてみてはどうだろう。

「日本料理ときわ」店舗基本情報
店名:日本料理ときわ
処:東京都港区西麻布1-9-7シュウエツレジデンスII 1階
電話・ファックス:03-3405-1237
営業時間:17:00~23:00 (ラストオーダー20:15)
定休日:日曜・祝祭日
席数:カウンター5席、テーブル6席、個室4〜6席
価格:1万8000円、2万5000円、3万5000円からのお任せ(税別)
最寄駅:乃木坂駅5番出口より徒歩9分六本木駅2番出口より徒歩8分
http://www.tokiwa-nishiazabu.jp/(7月中旬サイトオープン予定)

関連記事

  1. 「アンリ・ジロー」×「京都蒸溜所」の 幻のジンが「ラグジュアリーカード」とトリプルコラボ

  2. ドン ペリニヨン × レディー・ガガ 限定ギフトボックス10月1日より全国の百貨店で発売

  3. リビエラ逗子マリーナに『MALIBU HOTEL』が誕生

  4. baccarat

    バカラとフィリップ・スタルクの魅惑のコラボレーション20周年記念コレクション

  5. ミカフェートで、世界最高峰のコーヒーを。

  6. アンリ・ジャックよりコレクション ドゥ ラトリエ 2023が誕生

  7. HOTEL THE MITSUI KYOTO×細尾が京都旅を特別な体験にします

  8. 布とオートクチュールへの情熱

  9. 世界限定8点。稀少な大理石のテーブルをイタリア屈指の家具ブランド、ポルトローナ・フラウが発売。

人気記事 PICK UP!

HOT TOPICS

おすすめ記事

  1. 世界でたった一つのグローブ・トロッター。
  2. setsuniseko ニセコにオープンした新たなラグジュアリーホテル「雪ニセコ」
  3. egon schiele ウィーンが生んだ夭折の芸術家「エゴン・シーレ」の大規模展開催
  4. リシャールミルジャパン基金が「チャリティオークション2021」を開催
  5. shinjiohmaki 壮大なスケールでのインスタレーションを体験する―「大巻伸嗣 Interface …
  6. ダブルツリーbyヒルトン大阪城 5月に開業
  7. SHIGUCHI1 自然と人がつながる新しいコンセプトのアートな宿「SHIGUCHI」
  8. 日本茶の最高峰「八女伝統本玉露」のボトリングティー
  9. デンマーク発のアイウェアブランド、LINDBERG(リンドバーグ)東京・銀座に日…
  10. ショーメより、海をテーマにした新作ハイジュエリーが登場
PAGE TOP