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未完の聖堂、サグラダ・ファミリアとガウディの軌跡を辿る『ガウディとサグラダ・ファミリア展』開催

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バルセロナを中心に活躍した建築家アントニ・ガウディと、ガウディが設計・建設に携わったサグラダ・ファミリア聖堂に焦点をあてた「ガウディとサグラダ・ファミリア展」が東京国立近代美術館で開催されます。本展では、図面や模型、写真、最新映像などをまじえながらガウディの建築思想と造形原理を読み解く展覧会となります。

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サグラダ・ファミリア聖堂、2022年12月撮影 ©Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família

建築家アントニ・ガウディの誕生

ガウディは、1852年スペイン、カタルーニャ地方のレウスに生まれ、バルセロナを中心に活動しました。1883年に、サグラダ・ファミリア聖堂の2代目の建築家に就任。1914年には、他の仕事から手を引き、サグラダ・ファミリア聖堂の建設に専念し、1926年に亡くなるまで、聖堂の建設に心血を注ぎました。

ガウディは1873年に、バルセロナ県立バルセロナ建築学校(現在のカタルーニャ工科大学建築学部バルセロナ校)に入学します。卒業後に手掛けた、パリ万国博覧会に出品した革手袋店のショーケースのデザインが評判を呼び、後にパトロンとなる、アウゼビ・グエルの目に留まります。今回の展覧会では、そのショーケースのスケッチなどを紹介しながら、若き日のガウディの活動と産業革命を経て一気に変貌を遂げていく時代の流れをたどります。

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《ガウディ肖像》 1878年、レウス市博物館

「人間は創造しない。人間は発見し、その発見から出発する」

上記はガウディの言葉で、その言葉通り、ガウディは西欧のゴシック建築だけでなく、スペインならではのイスラム建築やカタルーニャ地方の歴史や風土などを深く掘り下げることで、時代や様式を飛び越える革新的な表現に到達します。また、自然からも多くのインスピレーションを受けており、徹底した自然観察から造形の原理を引き出し、有機的なフォルムの建築や什器をデザインしました。さらに、自然の中に潜む幾何学に注目し、それを建築造形へと応用する合理性も持ち合わせていました。そんなガウディ独自の建築スタイルを、「歴史」、「自然」、「幾何学」の3つのポイントから解説するのも本展覧会の見どころのひとつです。

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サグラダ・ファミリア聖堂、2023年1月撮影 ©Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família

サグラダ・ファミリア聖堂とガウディ

1882年に着工し、2026年までの完成を予定しているサグラダ・ファミリア聖堂。「未完の聖堂」と言われ、スペイン内戦により設計図が焼失してしまったり、更新されていなかった建築許可のせいで、違法建築となってしまったり(現在は解決済み)、コロナ禍で工事が一時中断するなどさまざまなトラブルを経て、ついに、完成の時期が視野に収まってきています。

ガウディが2代目の建築家に就任する以前、サグラダ・ファミリア聖堂は、建築家フランシスコ・デ・パウラ・ビリャールによるネオ・ゴシック建築様式の計画として進められていました。1882年に着工したものの、意見の対立からビリャールは辞任し、その後を引き継いだのが弱冠31歳のガウディでした。ガウディは図面のみならず、膨大な数の模型を作りそれに修正を加えながら、外観や内部構造を創り上げていきました。

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サグラダ・ファミリア聖堂受難の正面、鐘塔頂華 ©Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família

ガウディ自身が建設に関わることができた部分は、地下礼拝堂と生誕のファサード(降誕の正面)です。建築物には通常ファサードは一つしかありませんが、ガウディは、生誕のファサード、受難のファサード、栄光のファサードという3つのファサードを設けました。栄光のファサードが正面入口で、向かって右側にあるのが生誕のファサード、左側にあるのが受難のファサードです。生誕のファサードはキリストの誕生から初めての説教を行う青年期までの成長が、彫刻によって表現されています。

ガウディは彫刻家にその造形を託すことができず、自ら彫刻の制作に乗り出します。ガウディの彫刻制作の特徴は、当時最新の技術であった写真を利用したことと、動物や人間など実物モデルから、石膏の型取りをしたことです。これはガウディの自然に学ぶという態度を象徴しているといえるでしょう。こちらのセクションでは、スペイン内戦時の破壊を逃れたガウディのオリジナル彫刻や、模型室や生誕のファサードに飾る彫刻をつくるための塑像が並べられた保管庫の写真などが展示されます。

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アントニ・ガウディ《サグラダ・ファミリア聖堂、降誕の正面:女性の顔の塑像断片》 1898-1900年、サグラダ・ファミリア聖堂 ©Fundació Junta Constructora del Temple Expiatori de la Sagrada Família

ガウディの死後、1963年に始まったスペイン内戦により、彼が残した設計図や模型、資料などの殆どがなくなってしまいますが、職人による口伝や、戦火を逃れた模型や外観のデッサンなどを頼りに、歴代の建築家たちが作業を継続しました。近年では、コンピューターによる3D解析技術や3Dプリンターによるシミュレーション技術などにより工期が早まりました。

生誕のファサードの彫刻群のうち、中央扉のすぐ上に配置されている9体の天使像は、日本人彫刻家の外尾悦郎が手掛けたものです。外尾はガウディが残したわずかな資料を頼りに、これらの彫像を制作しました。本展では、2000年に砂岩で制作された石像に置き換わるまで、実際に設置されていた石膏像を展示します。

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外尾悦郎《歌う天使たち》 サグラダ・ファミリア聖堂、降誕の正面に1990-2000年の間仮設置、作家蔵 写真提供:株式会社ゼネラルアサヒ

「いや、この聖堂を完成させたいとは思いません」

ガウディは「このような作品は、長い時代の産物であるべきで、長ければ長いほど良いのです」と述べました。ガウディの建築は、そのユニークな造形や設計原理のみが注目に値するのではなく、社会の中で建築やモニュメントを成立させる思想的側面も持ち合わせることです。完成して終わり、というものではなく、時代とともにさまざまな形に変化をしながら、受け継がれ、後世に影響を及ぼし続けている現在進行系の有機的な建築なのです。ガウディの遺した功績が、21世紀の現在、いかなるアイデアをもたらしているのか、本展で目撃していただきたい。

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『ガウディとサグラダ・ファミリア展』
会期:2023年6月13日(火)―9月10日(日)※会期中一部展示替えあり
休館日:月曜日(7/17は開館)、7/18 (火)
開館時間:10:00-17:00(金・土は20:00まで、入館は閉館の30分前まで)
会場:東京国立近代美術館
展覧会公式サイト:https://gaudi2023-24.jp/
※滋賀、愛知へ巡回予定

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