待望のリシャール・ミル×フェラーリの初コラボモデルが登場

クルマへの情熱とともにフェラーリとのパートーシップが遂に始動

昨年リシャール・ミルとフェラーリのパートナーシップ締結が発表され、業界が騒然となったこともまだ記憶に新しい。そして世界中の時計愛好家やカーマニアが待ちに待った初のコラボレーションモデル「RM UP-01フェラーリ」がいよいよ誕生した。

リシャール・ミルは、2001年のブランド創設時から“時計のF1”をコンセプトに掲げ、進化を続けるレーシングマシンのように時計の技術革新を追求する一方、ル・マン・クラシックに代表されるヒストリックカーレースをサポートし、伝統的な自動車文化にリスペクトを捧げてきた。そして互いの価値観を共有する、ファミリーと呼ばれる仲間には、チームの枠に縛られることなく多くのレーシングドライバーを個別に迎え、メンバーはモータースポーツ界を牽引するキーパーソンも少なくない。その強い絆から共同開発された数々の革新作がブランドの歴史を彩ってきたのだ。

もちろん名門レーシングチームもこの例外ではない。2016年にはマクラーレン・レーシングに次ぎ、マクラーレン・オートモーティブとパートナーシップを結び、独創的なコラボレーションモデルを発表。これにいよいよフェラーリが加わったのである。
既成概念にとらわれることなく、より横断的に連携を深めていく姿勢からは、リシャール・ミル氏自身が心底クルマ好きであることが伺える。所有するカーコレクションも60〜70年代のF1やラリー、耐久のマシンなど多岐に渡り、チームやジャンルにこだわることはない。この時代、素材を始めとする技術の進化により、レーシングマシンの性能やデザインは格段に進化を遂げ、ドライビング技術もさらなる覚醒を遂げた。こうしたさらなるスピードを目指し、人間とマシンが切磋琢磨した蜜月時代へのオマージュとともに、飽くなきクルマへの情熱は確実にブランドに息づいているのだ。

厚さわずか1.75㎜という現行モデル最薄のウルトラフラット


かつてミル氏はインタビューでこう語っている。「(私たちは)どことも競合しない。もし競合するブランドがあるとしたら、それは腕時計ではなく、フェラーリやランボルギーニなのではないだろうか」。そしていまフェラーリはライバルではなく、パートナーになった。その記念すべき第一弾を飾るのがウルトラフラットなのである。
現代の時計の技術開発において、薄さは大きなチャレンジテーマになっている。どれほど設計や素材、製造の先進技術を駆使して薄くできたとしても、そこに腕時計に求められる強度や精度、実用性を両立しなくてはいけない。それは、これまで常識を超えた数多くの時計を生み出してきたリシャール・ミルにとっても未知の領域であり、だからこそ目指すにふさわしい頂点だったのかもしれない。同時に、機械式時計の伝統を守りつつ、自在な発想と比類なき技術を注ぎ、誰をもひと目で驚嘆させるウルトラフラットはリシャール・ミルの本領発揮といえるだろう。
「RM UP-01フェラーリ」は、横長になったトノー型ケースに、上中央にディスク式の時分針を備えたインダイアルと右に脱進機を配置する。そして左側上下に位置するのが、巻き上げと時刻合わせを切り換える「ファンクションセレクター」とそれを操作する水平型リュウズだ。この奇抜ともいえるデザインに実現した極薄は、ケースの厚さわずか1.75㎜、ムーブメントに到っては1.18㎜しかない。開発はオーデマ ピゲ ル・ロックルの研究部門と共同で進められ、何年にも渡る研究期間と、6000時間以上の開発とテストが繰り返されたという。

ムーブメントの薄型化には、歯車や針などを積層する通常の構造ではなく、各パーツを並列に広げるレイアウトが必須になる。さらに厚みを抑えるため、ムーブメントの地板をケースバックと一体化した特殊構造を採用するライバルもいる。その上で「RM UP-01フェラーリ」が選んだのは、ケースにムーブメントを収める従来からの構造だ。その分、ミクロン単位を削る難易度は増すものの、剛性と耐衝撃性を確保することができ、結果5000Gを超える加速度にも耐える。さらにケースのモノブロック化で10mの防水性も備えた。そこには、どんなに精緻な複雑機構であってもハードな使用に耐えなければ意味がないというブランドの信条が宿るのだ。
搭載するムーブメントは、すべてのパーツを薄型化することはもちろん、特許取得の技術を開発した。ウルトラフラット脱進機と名付けられ、アンクルから衝撃緩衝を担うダートとセーフティローラーをを省くことで、より薄く仕上げている。

薄さを極めて到達した、ブランドの新たなスタートライン


まるでメタルのカードを思わせるデザインは、これまでのリシャール・ミルのラインアップと比べても極めて個性的だ。本来は前面を覆う風防もインダイアルと脱進機のみにあてがわれ、リュウズも正面から専用工具を用いて操作する。動作確認を兼ねてあらわになったテンプは、まるでトゥールビヨンのようでもある。だが異端と呼ばれることはブランドにとってむしろ本望だろう。そのすべてはウルトラフラットという目的のためであり、スピードを極限まで追求したレーシングマシンと同様、一切の装飾は省かれ、唯一フェラーリを象徴するレーザー刻印された跳ね馬のみ。だがそれこそが「RM UP-01フェラーリ」のアイデンティティであり、まさに“時計のF1”を具現化したのである。
極薄を極めたスタイルは、時間という概念を可視化した時計の存在を再び抽象化させる。そぎ落とした結果、そこに残るのは原点であり、現点。それはリシャール・ミルが創設から約20年を過ぎ、新たに立ったスタートラインなのかもしれない。

文/柴田充
ライター。自動車メーカー広告制作会社でのコピーライター、出版社編集を経て、フリーランスに。現在は時計、ファッション、クルマ、デザインなどのジャンルを専門に、広告や編集、メンズライフスタイル誌を中心に執筆中。

RM UP-01 フェラーリ
キャリバー:RMUP-01(ウルトラフラット手巻きムーブメント)
ケース、ベゼル:グレード5チタン(サテン仕上げ)
リューズ:DLCコーティングの316Lステンレススティール
ケースサイズ:51,00 x 39,00 x 1,75mm
ムーブメントの厚さ:1.18 mm
ストラップ:ブラックラバーストラップ
防水:10m
パワーリザーブ:約45時間 (±10%)
石数:23
振動数:28’800 vph (4 Hz)
世界限定150本
価格:247,500,000円(税込予定価格)
問い合わせ先:リシャールミルジャパン TEL.03-5511-1555

《リシャール・ミル アフターサービス技術者のコメント》


新作RM UP-01 の注目ポイントは何といっても、厚さ1.75㎜という薄さです。その薄さの実現を可能にしたのは、特許取得の新型“ウルトラフラット脱進機”と“ウルトラフラット香箱”です。まずウルトラフラット脱進機についてご紹介します。
1つめのポイントは、テンプの厚さを発生させる部品“振り座”の再構築したことです。“大つば”と呼ばれる振石を取り付けている部分をなくし振石をテンワに配置し、“大つば”と“小つば”を接続し“アンクル”の“クワガタ”が通過するパイプ部分もなくし、“小つば”とは大きさ的に呼びにくくなった“つば”を用い安全性を確保しました。

2つ目のポイントは、“アンクル”の厚さを薄くするために“剣先”をなくした“アンクル”を開発したことです。“クワガタ”と“剣先”を統合した“クワガタ”形状を開発することにより、上記の”薄型テンプ”とともに薄型化に寄与しました。上記2部品だけでもかなり薄く出来ているのですが、“テンプ受け”も再構築している。通常は組み込まれ“テンプ受け”と一体となっている“ひげ持ち”を分割し、“ひげ持ち”を地板に取り付けています。しかも片振りの調整もしやすい設計となっているのです。

続いて、ウルトラフラット香箱です。一般的に“地板”と“受け”に挟まれる香箱部分は薄さを追求するにはこちらも重要な部品です。“香箱”の片面を“角穴車”と併用し、“香箱のふた”とすることで厚みを抑えるのはもちろんのこと、普通の時計なら“香箱真”が“香箱”から飛び出していて、“香箱真”の両端を“地板”と“香箱受け”で挟み“香箱”を保持するが、この時計の“香箱真”は両端どちら側も飛び出さず“真”で“香箱”を保持していません。“香箱”の周りに4か所配置されたベリリウム銅の“ブッシュ”を“香箱”側面に作りこまれた溝に差し込み、中空に浮いているように保持するという創意工夫をこらしています。
薄さを追求するためにさらにいくつかの工夫も凝らしています。オーソドックスな時計では“歯車の真”が“地板”を貫いて文字板側に動力を伝え、“時分針”を駆動しますが、この時計はそのような常識にとらわれず、“香箱”からの動力出力時点で2方向に出力しています。“香箱”から“テンプ”へとつながる調速用動力伝達輪列と“香箱”から時分表示につながる表示用動力伝達輪列があるのです。
また、リュウズをディスクタイプの歯車にすることにより厚さを抑え、厚さ方向に回転軸をもつ巻き上げ用歯車(キチ車)を必要としない設計になっているのです。また一般的にはリュウズを引いたり戻したりすることによりゼンマイ巻き上げと時刻合わせの切り替えもディスクタイプのファンクションセレクターを採用して、さらに薄さを追求しました。

サファイアクリスタルが配置された2か所の風防部分ですが、時刻表示部分は薄さ0.45mm、テンプ部分は最薄部では0.20mm、最厚部でも0.30mmしかありません。一般的な雑誌の表紙の紙厚は0.30mmでこちらより薄い部分があるのです。究極の薄さを実現するために多大な開発が行われたことが想像できます。

私たちの身の回りのものと比較してみましょう。100円玉の厚さが約1.73㎜なので、厚さは100円玉とほぼ同じです。時計本体の重さは11.2gで、これは単4電池1本とほぼ同等です。どれほど薄く軽いか想像できますでしょうか。このように薄さを追求したにも関わらず、他のリシャール・ミルの時計と同じく強度テストをパスし、5000Gもの耐衝撃を誇るのです。信じられないようなエクストリームな時計ですね。

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