ワインとアート、自然を愛する人々が集う憧れのワイナリー、南仏のシャトー・ラ・コストに滞在する


ワインとアートには、ある種の共通点がある。五感を揺さぶり、人生に思わぬ感動と豊かさをもたらすという点だ。現に、ワイン愛好家にはアート好きが多く、その逆も然り。そんなワインとアートを愛する人々の間で昨今話題のデスティネーションとなっているのが、南フランスのワイナリー「シャトー・ラ・コスト」だ。

画家セザンヌが愛したことで知られる南仏の古都、エクス=アン=プロヴァンス。歴史が日常に息づく美しい街から車で15kmほど北上し、アーモンドやホワイトオークの森を抜けると、「シャトー・ラ・コスト」のブドウ畑が現れる。エントランスには、日本を代表する建築家、安藤忠雄が手がけたなめらかな質感のコンクリート壁。伝統的なワイナリーとは異なる趣が、その先に広がるモダンで独創的な世界を予感させる。

自然界と共鳴するビオディナミのワイン


600エーカーにも及ぶ敷地には、なだらかな丘陵にブドウ畑とオリーブ畑、庭園が延々と広がる。「シャトー・ラ・コスト」の第一の特徴は、自然環境に配慮したサステナブルな農法に基づくワイン造り。カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、シャルドネ、グルナッシュなど全7品種のブドウはすべて無農薬、化学肥料不使用の有機農法で栽培されている。2009年には自然との調和の尊重を示すラベル「Organic Agriculture」を取得した。

畑だけでなく、ワイン造りのすべての工程においても環境への配慮を重視。伝統技法と最新技術を融合する醸造から生まれる赤・白・ロゼ3種のビオディナミのワインは、南仏の穏やかな気候と豊かな土壌によってもたらされるフレッシュでフローラル、フルーティなアロマが心地良い。自然そのものを感じさせる、混じりけのない恵みに満ちている。

ブドウ畑に点在する現代アートと建築


シャトー・ラ・コストの歴史は17世紀にまで遡るが、21世紀のはじめに英国・ロンドンの数々の名門ホテルの経営に関わってきたアイルランド出身の実業家がオーナーとなったことで、思いがけない転機が訪れた。ビオディナミを推進する一方で、新たなワインセラーの建造を、フランスを代表する建築家、ジャン・ヌーヴェルに依頼。さらにブドウ畑には同じく世界的に著名な建築家、レンゾ・ピアノによる醸造庫を兼ねたアートの展示会場や、フランク・ゲーリーによる音楽シアター、安藤忠雄が設計したアートセンターなどが出現した。

こうしてシャトー・ラ・コストは今日、美しいワイナリーであると同時に世界でも有数の現代アートと建築の展示施設へと姿を変えた。そのどちらも、自然との融合がテーマだ。

世界的な建築家、ジャン・ヌーヴェルが手がけた現代的なワイナリー

冒頭にも触れたように、ワイン愛好家にはアート好きが多い。ワインのコレクターは、往々にして優れたアートコレクターでもある。現オーナーもその一人で、敷地にはオーナー自らが収集した40点あまりのアート作品が点在する。アンディー・ゴールズワージー、アレキサンダー・カルダー、ジャン=ミッシェル・オトニエルなど、世界的に著名なアーティストたちによる彫刻やインスタレーションが、オリーブ畑やブドウ畑、樫の木や樹齢百年の松の林、草原に咲く花々と一体となり、自然と共存している。

フランスの若手アーティスト、プリュンヌ・ヌーリーによる「Mater Earth」

安藤忠雄による小さな教会とジャン=ミッシェル・オトニエル作の赤い十字架

ルイーズ・ブルジョワのブロンズ像「Crouching Spider」

科学的発想から生まれたトム・シャノンによる「Drop」

南フランスの旅に欠かせない憧れのデスティネーションに

杉本博司の数理模型シリーズ

今やシャトー・ラ・コストは、ワインとアートを愛する人々が世界中から訪れる南フランスの新たな名所となった。水庭に面したアートセンターでは、常時展覧会も開催されている(現在は「ダミアン・ハースト展」が6月23日まで開催中)。広大なブドウ畑と庭園を散策しながら、展示作品についての説明を聞くことができるガイドツアー(フランス語と英語のみ)も人気だ。プロヴァンス地方の美しく野生的な自然の中、大掛かりな建築物やアート・インスタレーションが次から次へと現れるのには驚かされることだろう。

エレガントなヴィラ・スィートに泊まり、五感を満たす


嬉しいことに、敷地内には28室のヴィラ・スィートからなる宿泊施設「ヴィラ・ラ・コスト」もオープンした。ドメーヌの丘の中腹にあるヴィラ・スイートは庭園、ハーブ、花々に囲まれ、広々としたテラスからはブドウ畑と渓谷の広大な眺めを楽しむことができる。細部にまでこだわり設計された内装は、プロヴァンスの伝統に敬意を払い、明るいオーク材、大理石、天然石など地元の素材を用いることで、自然との調和を尊重するドメーヌの精神を反映している。

施設内にはスパやライブラリー、バーも併設。静寂と安らぎに満ちたスパでは、ジャスミン、ラベンダー、ローズ、オリーブ、アプリコットなど、プロヴァンス産のオーガニック製品を幅広く取り揃えており、アロマオイルやクレイを使った極上のトリートメントを受けながら自然の深い癒しを感じることができる。

さらにプールのある広大な庭園やロビーギャラリーなど、どこに身を置いてもプロヴァンスらしい穏やかな風情にモダンな感性が融合し、心から寛ぐことができるだろう。

土地のワインと食材が織りなす美食の世界


許されるのであれば数日間滞在して、緩やかに流れる時の中でワインとアート、自然と食を心から満喫してみてはいかがだろう? 南フランス特有の溢れる陽光と自然に抱かれる、類のない体験に満ちた滞在は、日常では得られない五感の目覚めを促し、思いがけないインスピレーションをもたらしてくれるはずだ。

ちなみにこの初夏、多くの若者にも豊かな自然とアートの素晴らしさに触れてほしいという願いから、より気軽に滞在できるオーベルジュのオープンも控えているという。シンプルながらも洗練されたデザインで、ヴィラ・ラ・コスト同様に、滞在にはアートと建築のガイドツアーも含まれている。

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