H.モーザー2021年最初の新作は、眼と耳で楽しむハイコンプリケーション

ヒゲゼンマイまで自社製造する、真のマニュファクチュール

スイス・アルプスを源流とし、豊かな水量を誇るライン川は、ドイツとの国境にほど近い町ノイハウゼンで巨大な滝を形成している。このヨーロッパ最大の水量を誇るラインの滝は、かのゲーテも度々訪れた名瀑である。アルプスの山々とはまた異なる、雄大な自然の景観が残るこの町で、H.モーザーの時計は作られている。
このファクトリーでは、振り子に代わって時をカウントするテンワとヒゲゼンマイ、その動きに順応してゼンマイの巻き戻りを制御する脱進機のような機械式時計のキーパーツを含む、ムーブメントに関するほぼすべてを自社製できる技術と設備を有するスイスでも稀有な存在。
スイスの工房では、14 個の自社製キャリバーを開発し 、 年間 約1500 個の時計を製造。

またダイアル製造技術にも秀で、独自の美学を表現してきた。さらに家族経営による独立ブランドである点においても、H.モーザーはスイスで稀有な存在である。ブランドのコンセプトは、「Very rare」。高い内製率と外部からの干渉を受けない家族経営によって、独創性が存分に発揮できるのである。
H.モーザーは ハインリッヒ ・ モーザーにより 1828 年に創設

唯一無二のレアな存在を目指すH.モーザーを象徴するのが、2015年にスタートした「コンセプト」と名付けたダイアルからインデックスとロゴを排してミニマルを極めた限定モデルのシリーズ。これは、20世紀を代表する建築家ミース・ファン・デル・ローエが提唱した「Less is more(少ないほど豊かである)」との美学の表現の1つであり、また美しいダイヤルの仕上がりを見れば、ロゴがなくともH.モーザーの時計だと分かるとの自信の表れでもある。これまでブランドのアイコンともいえる繊細なグラデーションを奏でる「フュメ」や世界一黒い物質ペンタブラック®など、多彩な“コンセプト”ダイアルを創出してきた。

ミニマルなダイアルに浮き立つ、トゥールビヨンとミニッツリピーター

この「エンデバー・コンセプト ミニッツリピーター トゥールビヨン」は、その最新作である。ダイアルの中心から放射状に繊細なヘアラインを施したサンバースト仕上げにより、ブルーがメタリックな質感を表す。これを称して、エレクトリックブルー。このモデルのために開発された、新ダイアルだ。その名の通り、そしてご覧の通り、ミニッツリピーターとトゥールビヨンとを統合した、ハイコンプリケーション・モデル。
6時位置にはダイアル側に遮るものが何もないフライングトゥールビヨンが、堂々とその全容を見せ、外周にはミニッツリピーターのゴングとハンマーがセットされている。インデックスもロゴもなく、ミニマルを極めたコンセプト・ダイアルは、2つの複雑機構の存在をより鮮明に浮き立たせる最上のステージ。他社ではケースバック側に設置されることが多いゴングとハンマーとをダイアル側に置いたのは、コンセプト・ダイアルの美しさとミニッツリピーターの魅力とを響き合わせるため。現在時刻を時・15分・分の各単位を、現在時刻の数だけ打ち分け鳴らすメカニズムは、時刻の読み取りと伝達、そしてハンマーの起動・制御という極めて複雑な構造を持つ。

時刻を知らせる音色はこちらを↓
YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=aSyQDM4Ns_A&feature=youtu.be

ハンマーとゴングとを切り離し、ダイアル側に独立させるには、巧妙な設計が要求される。それを実現するためH.モーザーは、ミニッツリピーターのエキスパートであるTimeless社と手を組んだ。
ダイアルにハンマーとゴング、そしてトゥールビヨンを見せる“コンセプト”のためのムーブメントは、まず2018年に角型の「スイス アルプ ウォッチ」で実現され、翌年に丸型の「エンデバー」用へと発展。本作は、その丸型ムーブメントCal.HMC903を搭載する第2弾である。
ダイアルは、ハンマーとゴングの設置スペースと可動域とを確保するため、立体的に造作されている。そしてゴング自体も、ダイアルに設置しやすく、かつ見せるのにふさわしい優美な曲線が与えられた。
時打ち機構の魅力を引き立てる特異な設計は、音響的にも有利だ。ダイアル内の空間全体がゴングの共鳴スペースになり、また裏蓋側に置くよりも外部に音色が伝わりやすいから。さらに前作のケースがホワイトゴールド製であったのに対し、この新作ではチタン製へと変更された。弾性に優れ、また比重が低くて軽いチタンの特性は、音響面においても有利に働く。ケース径が43mmと大振りなのも、十分な共鳴スペースを得るため。一方で厚みは、トゥールビヨンも搭載しながら、14mmに抑えられている。

ケースは大振りだが、チタン製であるため着け心地は軽快。厚みが抑えられているので、フォーマルなスーツともマッチする。

キャリッジ内にテンプと脱進機を収めるトゥールビヨンは、薄くすることが難しい。そこで脱進機を駆動させる固定歯車を内縁に歯を持つリング状とすることで、その内側にまでキャリッジの位置を下げ、薄さを実現した。キャリッジの回転軸は、裏蓋側でボールべアリングによってガッチリと支えられ、耐衝撃性を高めている。ミニッツリピーターだけでなく、トゥールビヨンの設計も実に巧妙である。
清冷なエレクトリックブルーのダイアルを舞台に、フライングトゥールビヨンは1分間で1周する輪舞を踊り、そしてケース左サイドのスライダーを操作すれば、ハンマーがゴングを打って現在時刻を知らせる様子がつぶさに見られ、それらが奏でる澄んだ音色は、その舞いのBGMとなる。眼でも耳でも楽しめる、かくも美しきハイコンプリケーションが、誕生した。

エンデバー・コンセプト ミニッツリピーター トゥールビヨン
手巻き、チタンケース、ケース径43mm、アリゲーターストラップ、日常生活防水・世界限定20本。3900万円(税別・予価)(今春発売予定)
サンバースト仕上げのダイアルは、光に当たり具合で色のニュアンスが変化する様子が美しい。リーフ型の針も立体的に設えられ、入念にポリッシュ仕上げされている。切削・プレス・研磨のいずれも難しい難加工材であるチタンを、優美なフォルムに仕立て、完璧なポリッシュ仕上げを施して、高級時計にふさわしい上質な質感を創出した。

ムーブメントの仕上げも、実に見事。ミニッツリピーターリピーターのスライダーボルトは、テフロン製のランナーに設置され、操作感が実にスムーズである。

眼と耳で楽しむハイコンプリケーションの新作モデルの動画はこちらを↓
YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=aSyQDM4Ns_A&feature=youtu.be

 

H.MOSER&CIE.
https://www.h-moser.com/ja/

 

関連記事

  1. かつてない規模の大回顧展「展覧会 岡本太郎」開催

  2. リシャール・ミルとマクラーレンが初の腕時計を発表!

  3. 役目を終えた靴を素敵に蘇らせる「ウエストン・ヴィンテージ」

  4. リシャール・ミルがフェラーリとの数年間にわたるパートナーシップを発表!

  5. リシャール・ミルの自社開発クロノRM 72-01は、見どころ目白押し!

  6. 伊勢丹新宿店本館5階=ウォッチにラグジュアリーを極めたカフェが誕生。 後篇

  7. ついに公開されたRM 40-01“スピードテール”その吸引力とは

  8. リシャール・ミルのチャリティ活動とは。

  9. 時計連載 / H.モーザー 最終回

人気記事 PICK UP!

HOT TOPICS

おすすめ記事

  1. リゾナーレ小浜島が7/1にグランドオープン!
  2. 山形県南陽市の名宿「山形座 瀧波」が、ミシュラン星付きシェフを招聘してのコラボレ…
  3. setsuniseko ニセコにオープンした新たなラグジュアリーホテル「雪ニセコ」
  4. ラリックの香水『クリスタルボトル コレクション2020 《オーキデ》』が発売。
  5. 役目を終えた靴を素敵に蘇らせる「ウエストン・ヴィンテージ」
  6. ロゴもインデックスもなし 際立つ文字盤の美しさが本物を問うH.モーザーのミニッツ…
  7. ロロピアーナ 「ロロ・ピアーナ・インテリア」が自然の創造物からインスピレーションを得た最新コレ…
  8. W大阪とクリスチャン ルブタン ビューティがコラボしたエレガントなアフタヌーンテ…
  9. 【FLEXFORM TOKYO】新作コレクション2023 展示・販売を開始
  10. eaufeu 石川県の里山の魅力をフレンチで表現。「オーベルジュ オーフ」が注目される理由。
PAGE TOP