Salon Rétromobile: Le passé a toujours un futur過去と未来をつなぐ架け橋


2月最初の週、パリはヴィンテージカー・ウィークとなる。これは1976年に始まり、今年で49回目を迎えた Salon Rétromobile(レトロモービル) が開催されるためだ。
旧車愛好家のミーティングとして始まったこのイベントは、ヴィンテージカーブームの後押しもあり、現在では巨大な国際的イベントへと成長した。週末を含む5日間で15万人以上が来場し、もはや単なる旧車趣味の集まりを超えた存在となっている。
フランス国内のみならず世界中から注目されるイベントとなり、多くの自動車メーカーも本格的に参入するようになった。

「過去の遺産」を継承する場であり、パリ・モーターショー以上の影響力に


その背景には、2年に1度開催される最新の自動車ショー パリ・モーターショー(Mondial de l’Automobile)の影響もある。
フランスは電気自動車(EV)シフトを加速させており、原子力発電を活用しながら国策としてEV推進を進める。しかし、その結果、パリ・モーターショーでは中国の新興EVメーカーがほとんどを占め、伝統的な自動車メーカーの参加が激減。昨年の開催では日本メーカーの姿はついになかった。
これに対し、ヴィンテージカーの世界はレシプロエンジンを中心とした「過去の遺産」を継承する場であり、その魅力を未来へつなぐレトロモービルは、パリ・モーターショー以上に大きな影響力を持つイベントとなっている。

パリがヴィンテージカー・ウィークとなる理由

レトロモービル単体では「ヴィンテージカー・ウィーク」と呼ぶにはやや大げさに感じるかもしれない。しかし、レトロモービル開催に合わせ、パリでは世界的なヴィンテージカー・オークションが開催される。

レトロモービル公式オークションハウス Artcurial に出品された 1911年製 Brasier 22/30 HP トロペド。当時、アルゼンチンへの輸出用に標準モデルよりも頑丈な設計が施された特別モデルとして生産された。2003年にフランスへ戻り、2007年にはパリ~北京ラリーの14,000kmを完走。その後も長距離ラリーに参加し続けている。まさに冒険者向けの旧車として出品された。

Artcurial(アールキュリアル) は、レトロモービルの公式オークションとして Paris Expo Porte de Versailles 内で開催。

1900年のパリ万博のために建設されたグラン・パレで、ボナムスのオークションが開催された。

グラン・パレは屋根がガラス張りのため、自然光が差し込む。ベル・エポック様式の館内では、同時期の車の展示と調和する。車両は 1925 年製 Amilcar CGS3。

出品された戦前の車両たち。今年のオークションでは、長年同じオーナーに大切に所有されていた車が多く、可能な限りオリジナルの状態を維持しているものが目立った。

1966年製の Jaguar E-Type Coupé 2+2 をベースに、1987年に精巧なレプリカ製作で高い評価を得た Lynx Motors International によって XKSS 仕様に仕立てられたレプリカ。フルアルミニウムボディの Lynx XKSS。

出品されたオートバイの中では、日本車が活躍する以前のグランプリレースで輝かしい実績を残した Mondial が多数出品された。小型ながら DOHC 4バルブ を採用した精巧なエンジンは美しく、手前に見えるのは 1957年製 250cc プロトタイプ。

Bonhams(ボナムス) は、1878年のパリ万博で建設され、昨年のオリンピックに合わせて修復された グラン・パレ で開催。

こちらはルーブル美術館の地下で行われたRM サザビーズ。1960年代のレース界で歴史を刻んだ フェラーリ 250 LM は、この日オークションの世界でも約 55億円 という驚異的な価格で落札され、オークション史にも新たな歴史を刻んだ。

ターンテーブルにディスプレイされた 250 LM。美しいリアビューを眺めると、NART(North American Racing Team) のプレートが取り付けられている。

RMサザビーズ は、ルーヴル美術館地下のカルーセル・ドゥ・ルーヴル で開催。

これら3カ所でのオークション総売上は数百億円に達し、世界中のコレクターの注目を集めている。特に、RMサザビーズでは1964年製のフェラーリ250 LMが約55億円(2,060万ユーロ)で落札。この車両は北米レーシングチーム(NART)に所属し、ワークスチーム以外で初めてル・マン24時間レースを制覇したモデル。フェラーリが再びル・マンで勝利するのは2023年まで待たねばならなかった。

また、RMサザビーズは前週、ドイツ・シュトゥットガルトで行われたオークションで メルセデス・ベンツ W196 を 約81億円 で落札。5日間の総売上は 約190億円(1億2,022万8,275ユーロ) に達し、クラシックカー市場の活況を証明している。

シトロエンDS 70周年: フランス自動車界の象徴

今年のレトロモビルの主役は シトロエン DS。その象徴的なモチーフとして、DS バルーン があしらわれている。

シトロエン DS の特別展示。この日の主役は、復元された DS バルーン。初日の夜のレセプションまで、その姿はベールに包まれていた。

そして姿を現した DS バルーン。1959年のサロンで展示されたものを復元した。歴代の DS に囲まれながら、水に浮かぶようなソフトな乗り心地というアイコンが、再びその姿を披露したのだ。

今年のレトロモービルでは シトロエンDSの70周年 がメインテーマとなった。シトロエンDSは1955年に誕生し、当時の最先端技術を搭載した未来的なデザインで話題を呼んだ。1959年には、DSの比類ない快適性をアピールするため、広告ディレクターのクロード・プーシュがデザインした 「DSバルーン」 が製作された。これは、ハイドロニューマチック・サスペンションの球体を象徴する風船を用いたユニークなディスプレイで、まるで浮いているかのような印象を与えた。この伝説的なモデルが、70周年を記念して復元された。

DSの展示では、実車だけでなく、貴重な当時のデザインモックアップなども披露された。

DSの象徴的なデザインを表現したアート作品が展示され、その優雅なフォルムと革新性を讃えていた。

また、レトロモービルの公式展示では、フランスのF1における60年の歴史も取り上げられ、マトラMS10をはじめとするフランスチームやエンジン、ドライバーの活躍を紹介する実車展示が行われた。

日本メーカーとメーカー公認レストアの存在感

電動自動車を推し進めるフランスでは、トヨタのハイブリッドは後れを取っている印象がある。その中で、トヨタは電気を扱って60年の経験があることを強調する展示を行った。その一環として、ヨタハチ(トヨタ・スポーツ800)をベースに開発されたハイブリッドのプロトタイプ が紹介され、そのベースとなったヨタハチの展示も行われた。

パリ・モーターショーでは姿を消した日本メーカーだが、レトロモービルでは独自の展示で存在感を示した。

トヨタ: ハイブリッド技術60周年として、初のハイブリッド車プリウスや、トヨタ800の展示。
三菱: ダカール・ラリーやWRCでの活躍を讃える四輪駆動車の40周年記念展示。
マツダ: ユーノス・ロードスター(MX-5)35周年記念展示。

さらに、メルセデス・ベンツをはじめとする多くのメーカーは、自社でクラシックカーのレストアを手掛ける専門部門を新設し、メーカー公認のオフィシャル・レストアを施した車両の展示も行っている。これにより、オリジナルの状態を維持しながらも最新の技術を取り入れたクラシックカーが注目を集め、ヴィンテージカー市場のさらなる発展が期待されている。

進化し続けるレトロモービル

レトロモービルでは、ヨーロッパ各国からのディーラーが持ち込んだ車両が華を添える。メインホールでは憧れのヴィンテージカーが並び、別のホールではフランス国内のオーナーズクラブの展示や、手頃な価格のクラシックカー即売会も開催され、あらゆる層の車好きが楽しめるイベントとなっている。
2026年にはレトロモービルが50周年を迎え、アメリカ・ニューヨークでの開催も発表 された。これは、クラシックカー市場が世界規模で拡大している証拠でもある。

人気の「3万ユーロ以下で買えるヴィンテージカー」コーナー では、懐かしい車に出会えることから多くの注目を集めている。手頃な価格設定のため、マイクロカーなどのコンパクトなクラシックカーが特に人気を集めている。

クラシックカーの経済効果と未来

展示室の様子。この日はパリの自動車学校の生徒達が見学に訪れていて大賑わい。若い世代にはPagani Huayra RやKoenigsegg Ageraなどスーパーカーが最も人気のようだった。

パリでは近年、最高速度30km/hの制限 や 自転車レーン優先化 など、自動車規制が進む一方で、ヴィンテージカー市場の熱気は高まり続けている。クラシックカーは単なる趣味の対象ではなく、文化的遺産としての価値を持ち、世界的な投資対象にもなっている。特に高額で取引されるフェラーリやメルセデスのレーシングカーは、株式や不動産と並ぶ資産クラスとして位置付けられている。
歴史ある車たちは、新たな世代へと受け継がれ、クラシックカー市場の成長は今後も続くだろう。レトロモービルは、その「過去と未来をつなぐ架け橋」として、これからもヴィンテージカー文化の中心であり続けるに違いない。

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1966年製アストンマーティン DB6 シューティングブレーク。FLMパネルクラフト社によってカスタムされたワゴンタイプの希少なモデル。

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