エレガントなユニセックスモデルのトゥールビヨンが2モデル発表

新作の最新情報

同時に2モデル発表となった今回の新作を、時計業界の最先端で活躍する時計ジャーナリスト・福田 豊さんと、リシャール・ミルのアフターサービスを担当する時計技術者・竹中茂喜さんに解説していただきました。

2021年になり、まだ半年の過ぎていない5月初旬の時点で、既に「RM 21-01 トゥールビヨンエアロダイン」、「RM 40-01 オートマティック トゥールビヨン マクラーレン スピードテール」という2つの新作トゥールビヨンを立て続けにリリースしているリシャール・ミル。
「RM 21-01 トゥールビヨンエアロダイン」は最新の特殊合金であるHAYNES®214®をハニカム構造にして使用したハイテクモデル。「RM 40-01 オートマティック トゥールビヨン マクラーレン スピードテール」はマクラーレンとのパートナーシップモデルの第3弾となる最新進化版。いずれもが今日の時計界の最先端を行く大作である。
そして5月25日、今度は一転、エレガントなユニセックスモデルのトゥールビヨンが2モデル発表された。

「RM 74-01 オートマティック トゥールビヨン」と「RM 74-02 オートマティック トゥールビヨン」は、ケース素材や各部の仕上げの違いなどから一見異なって見えるが、実は基本はまったく同じの、双子のようなモデルである。もちろん、リシャール・ミルならではの革新性も十分備える。
「RM 74-01 オートマティック トゥールビヨン」はケースにグレーサーメットを使用。「RM 74-02 オートマティック トゥールビヨン」は、ケースにゴールドカーボンTPT®を使用。どちらもリシャール・ミル独自の素材だ。

ケース素材へのこだわり

グレーサーメットは2020年発表の「RM 11-05 オートマティック フライバック クロノグラフ GMT」で初採用。チタンの軽量性とセラミックスの硬度を兼ね備え、優れた耐腐食性と耐傷性を有するのが特徴だ。サーメットとはセラミックスと金属を複合させた高硬度の超合金のこと。その優れた物理特性から防弾用具や、航空宇宙産業での大気圏再突入用シャトルの部品や胴体外部、レーシングカーのブレーキなどに使用されている。グレーサーメットはジルコニウムの金属マトリックスと高性能セラミックスを組み合わせたもの。REACH規制(化学物質の登録・評価・認可・制限に関するEU法)に準拠させるため、超硬合金の組成では一般的なニッケルやコバルトを含めなかったのも優れた特性。ちなみに、そのために製造はいっそう困難を極めたという。また、マイクロ技術を専門とするIMIグループとの数年間に及ぶ開発により、不要な結合材を取り除き、必要な材料のみを保持することに成功したのも特筆点。この革新的プロセスでは、高温での加圧の際に強力な電流を次々と印加することで焼結速度を促進する、フラッシュ焼結と呼ばれる技術が採用されている。そしてそれら高度な技術により生まれたグレーサーメットは、密度が4.1g/cm³とチタンより低く、ダイヤモンドとほぼ同等の2360のビッカース硬度を誇る。軽く、硬く、傷つきにくい、まさに時計ケースに最高の素材なのだ。

ゴールドカーボンTPT®も初採用は2020年。ごく簡単にいうと、カーボンTPT®と金箔を組み合わせたものだ。カーボンTPT®は、そもそもはレーシングヨットのマストのためにスイス・ローザンヌのNTPT™社が開発した鍛造カーボン素材。軽く丈夫であるため、F1や航空宇宙産業でも使用されている。製造工程は、これも簡単にいうと、まずカーボンファイバーから分離した繊維を並列に並べた後、特殊な機械により45度の角度でカーボン繊維の横糸を織り込む。これにブラックの樹脂を浸透させた厚さ30ミクロン以下の繊維層を重ね、鍛造カーボンと同様に6バールの加圧と約120℃の熱処理を加えることで成型。驚異的な軽さと硬さと強度を誇り、独特の木目のような模様が出るのが特徴だ。
ゴールドカーボンTPT®は、繊維層を重ねる際に、24Kゴールドの層を加えたもの。ただしゴールドは科学的に不活性であるためカーボンと上手く融合させるのが非常に困難。そのため開発にはNTPT™社と共同での数年間に及ぶ研究を要したという。
マットブラックの木目のような模様のなかに、キラリと光る24Kイエローゴールドのラインが、美しく際立っているのが素晴らしい長所。他に類のないラグジュアリー感とエレガントさになっている。

完全自社開発の自動巻きトゥールビヨンムーブメントを搭載

一方、双子のような2つのモデルに共通の、いちばんの特徴は、完全自社開発の自動巻きトゥールビヨンムーブメントを搭載すること。「RM 74-01 オートマティック トゥールビヨン」が搭載するのは地板とブリッジにPVD加工とエレクトロプラズマ処理を施したグレード5チタンを使用した「Cal. CRMT6」。

「RM 74-02 オートマティック トゥールビヨン」は地板とブリッジにイエローゴールドとレッドゴールドを使用した「Cal. CRMT5」。
外観以外はまったく同じムーブメントだ。

ところで、きっとご記憶の方も多いだろう、リシャール・ミルの初の完全自社開発自動巻きトゥールビヨンムーブメント「Cal. CRMT1」は、レディスモデルに搭載されて発表された。2018年登場の「RM 71-01 オートマティック トゥールビヨン タリスマン」である。
「RM 71-01 オートマティック トゥールビヨン タリスマン」は、現在のレディス・コレクション・ディレクターであるセシル・ゲナ女史のデビュー作だ。当時のリリースでリシャール・ミル氏はこう語っている。
「我々の時計は車や航空産業からインスパイアされた、非常にテクニカルかつハイパフォーマンスなものとして認知されています。ですが、ここ数年は女性モデルの売り上げが急激に伸びています。これはつまり、現状に新しい活力を注入し、女性コレクションを新しいステージへと引き上げるために、我々にはクリエイティブで才能のある若き女性メンバーが必要という事です。それが私の友人でビジネスパートナーであるドミニクの息女、セシル・ゲナです。彼女は数々の技術的困難を克服し、既成概念を打ち破ったユニークかつ現代的なスタイルを生み出してくれました。」
すなわち「RM 71-01 オートマティック トゥールビヨン タリスマン」は、リシャール・ミルの新時代を象徴するモデル。リシャール・ミルのマスターピースとなるレディスモデルである。実際、これまでのリシャール・ミルのレディスモデルのなかでも、ひときわ美しく輝く存在だ。リシャール・ミルのホームページの「歴史的モデル」のひとつとしても紹介されている。

そしてその「RM 71-01 オートマティック トゥールビヨン タリスマン」と、今回の新作の「RM 74-01 オートマティック トゥールビヨン」と「RM 74-02 オートマティック トゥールビヨン」は、とてもよく似ているのだ。
まず、搭載ムーブメントの「Cal. CRMT6」と「Cal. CRMT5」は「Cal. CRMT1」の後継機といえる。一大特徴の可変慣性モーメントローターと可変慣性フリースプラングテンプもそのまま引き継がれている。独特のスケルトンのデザインもまったく同じだ。
ケースサイズも酷似している。正確には、「RM 71-01 オートマティック トゥールビヨン タリスマン」のケースは52.20×34.40×12.50mm。「RM 74-01 オートマティック トゥールビヨン」と「RM 74-02 オートマティック トゥールビヨン」は52.63×34.40×13.05mm。その差はごくわずかだ。

それだから、こう思うのだ。つまりこの2つの新作は、リシャール・ミルのマスターピースであるレディスモデルのDNAを受け継いだユニセックスモデルなのだろうと。そしてそれは素晴らしいこと。よりいっそうジェンダーレスになった今の時代に、まさに最高のモデルとなるものだからだ。

では、グレーサーメットの「RM 74-01 オートマティック トゥールビヨン」と、ゴールドカーボンTPT®の「RM 74-02 オートマティック トゥールビヨン」の、どちらがよいか。これは難しい問題。どちらも魅力的すぎる。さて、あなたはどちらがお好みだろうか。

文/福田豊(ふくだ・ゆたか)
ライター&編集者。「LEON」、「ENGINE」「クロノス日本版」など、さまざまな雑誌で時計、クルマ、旅など男性のライフスタイルについて執筆。WEBマガジン「FORZA STYLE」での動画コンテンツ連載「ロック福田の腕時計魂!」に出演するなど、幅広く担当されている。

リシャール・ミル アフターサービス 時計技術者がみる
ココがスゴイ!

今回の新作はスケルトナイズされたデザインのため、時計内部の構造や歯車の動きをよく観察することができるモデルです。ですので、手に取った方にぜひ注目していただきたいポイントがあります。
それは、普段あまり見ることのない地板やブリッジの裏側です。非常に細かい部分にまで面取りやサンドブラスト加工などが施されていることが分かります。
もし機会があれば、ぜひルーペを使ってみてください。ルーペで見ても傷も塵も一つもないことがお分かりいただけると思います。表側だけではなく、裏側にまで完璧な仕上げを施し、丁寧に組み立ている、リシャール・ミルのこだわりを実感できるモデルなのです。
また搭載している自社開発トゥールビヨンキャリバーに関しても、それぞれのモデルのためにデザインして作られています。この2モデルのキャリバーCRMT5とCRMT6を「RM 71-01 オートマティック トゥールビヨン タリスマン」で使用されたCRMT1と比較してみると、角穴車の振れや香箱受けの摩擦を防止するために、香箱受けにTZPブラックセラミックスを新たに追加しているように見受けられます。また「RM 74-02」にはイエローゴールドとレッドゴールドが採用されていますが、2種のゴールドを採用しているのは今回が初めてです。初めてという点に着目すると、自動巻き用の可変慣性モーメントローターとリューズは今までにない新しいデザインです。
ベゼルには、リシャール・ミル独自の素材である、グレーサーメットとゴールドカーボンTPT®を採用しています。どちらも開発には長年の研究を要した素材です。
自社製のトゥールビヨンを搭載しているので、年間生産本数はかなり限られると思いますが、限定品ではないのもポイントですね。ぜひ実際に手に取っていただき、リシャール・ミルのこだわりを体感していただきたいモデルです。

文/竹中茂喜(たけなか・しげき)
時計修理技能士1級を持つリシャールミルジャパン テクニカルマイスター。年に数回スイス、レ・ブルルーにある工房でトレーニングを受けリシャール・ミルを熟知するひとり。

「RM 74-01 オートマティック トゥールビヨン」

自動巻き(自社開発キャリバーCRMT6)、グレーサーメット×チタンケース、ケースサイズ:52.63 x 34.40 x 13.05mm、ラバーストラップ、50m防水、52,800,000円(税込)

「RM 74-02 オートマティック トゥールビヨン」

自動巻き(自社開発キャリバーCRMT5)、ゴールドカーボンTPT®×5Nレッドゴールドケース、ケースサイズ:52.63 x 34.40 x 13.05mm、ブラックバリスティックストラップ、50m防水、59,400,000円(税込)

問い合わせ先:リシャールミルジャパン
TEL.03-5511-1555
https://www.richardmille.com/ja

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