世界にたった88台にしか許されない、名機のビスポーク仕様とは
1957年、ルマン24時間で優勝を果たした「アストンマーチン」。名機「DBR1」がもたらした栄光だった。「DBR1」がレースにデビューしたのは、1956年。わずか1年での快挙だった。そこからは怒涛の優勝ラッシュが続き、1959年には、当時からスポーツレーシング界で強豪だったフェラーリを差し置いて、ワンツーフィニッシュを果たすほどだった。その後アストンマーチンがF1に転向したこともあり、一線を退くことになる。1963年に、当時生産されていた「5台」全てが売却されたのだ。たった7年。栄光の命が長かったわけではない。でも、歴史的快挙の力は確かだった。そんな「DBR1」の栄光が色濃く反映され、敬意を評した専用オプションが発表されたのだが、このビスポーク仕様にすることができるのは、なんと世界にたった88台しかない「V12 Speedster」だけだ。希少すぎる「DBR1」ビスポーク仕様モデルの魅力とは、一体……
アストンマーチンの特権
1957年からの現役時代の活躍ももちろんだが、「DBR1」をさらに有名にした、衝撃的なオークションが2017年に行われた。クルマ好き、またはカーコレクターの中で、今や「DBR1」を知らない者はいないんじゃないだろうか。そう思うほどの、ビックオークション。元々世界にたった5台しか生産されなかった「DBR1」。それぞれDBR1/1、DBR1/2、DBR1/3、DBR1/4、DBR1/5と、生産された順番に正式名称がついていたのだが、その中でももっとも貴重と言われている「DBR1/1」が、サザビーズオークションに出品されたのだ!こんな貴重なマシンがオークションに出品されるとは……世の中の期待を裏切ることはなく、最終落札額は、なんと2250万ドル。日本円にして、当時の相場で24億円という超高額値だった。この額は、当時の英国車最高落札額だったという。それほどまでに、世の中に夢を見せたアストンマーチンの名機。ビスポーク仕様を生産することができるのも、もちろんアストンマーチンだけだ。
「V12 Speedster」の最新技術と歴史のコントラスト
「DBR1」ビスポーク仕様は、世界にたった88台しかない、極めて希少なアストンマーチン「V12 Speedster」にのみ許される。このクルマは、2013年にアストンマーティンの創立100周年に合わせて製作されたコンセプトカー「CC100スピードスター・コンセプト」の、最新バージョンと言われるモデルだ。ルーフも、フロントウィンドもない。随分と使われなくなっていた、ボンネットの先端に隙間が開いているデザインも、このクルマで復活した。そんなエレガントで芸術的な見た目と造りでありながら、走りは超刺激的。心臓部には、排気量5.2リッターの、V12ツインターボエンジンの高性能バージョンが搭載されている。最高出力の馬力は約700PS、最大トルクは約753Nmと、かなりパワー。もちろん加速も素晴らしい。0~100km/hの加速は3.4秒、最高速度は約318km/hに達するらしい。フロントウィンドウやルーフを持たないクルマとしては、驚異的な数字だ。そしてポイントとなるのはやはり、この驚異的な走りに、アストンマーティン・レーシングの歴史と、愛を感じさせるインテリアが、プラスされるということだろうか。名機「DBR1」がもっとも輝いていた時代が表現されている。オープンキャビンにはスイッチギアが採用されているのだが、これらも歴史的なオマージュだ。そして現代的なカーボンファイバーが使用されているボディでありながら、アストンマーチン・レーシング・グリーンの塗装に思わず歴史を感じる。そこから覗く透明なリアウィンドウの中には、同じくチームカラーに塗装されたドライバー&パッセンジャー用のユニークなヘルメットが配備された。21インチのセンターロック・ホイールには、最先端のダイヤモンド旋削仕上げが施された。なんとこれらの車体の塗装プロセスには、最先端の塗装施設をもってしても、50時間以上もの時間がかけられているという、手の込みっぷりだ。名機「DBR1」ビスポーク仕様にすることでさらに強くなった、歴史と現代の絶妙なコントラスト。そして、惜しみなくかけられた手間隙が、世界に88台しかないという貴重さを格上げしている。ベースモデルの価格76万5000ポンド(付加価値税込)~
現代の栄光は、誰の手に
誇れる歴史と、確実に身につけた現代の最新技術。エレガントさと、刺激的走り。この魅力溢れるコントラストは、栄光を築きながらも、創設100年以上もブランドを守り続けてきたブランドにしかなし得ない、最高の技だ。手にするのは、一体誰なのだろうか。
アストンマーチン
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