ファントムをも脅かす新しいゴースト。

4WD、4WSを備えたロールスロイス。

世界一の高級車という名声を得た「シルバーゴースト」

ロールスロイスが初めてゴーストの名をクルマに冠したのは1907年のこと。型式名称40HP/50HPの連続耐久テストに用いられた車両のペットネーム「シルバーゴースト」がその成功を機に通称へと昇格。その後、ロールスはシルバーゴーストの成功によって、世界一の高級車という名声の礎を築いたわけだ。
この当時のオリジナルゴーストに対して、09年に発売を開始したゴーストは、イングランド南部にある現在の本社の所在地をとって、グッドウッドゴーストと社内では呼ばれているという。いわば初代グッドウッドゴーストは、ロールス史上最多の販売台数を記録。その成功によって、ロールスの顧客平均年齢は急激に若齢化、レイス/ドーンやカリナンも加わった現在は約43歳と、同門のミニやBMWよりも若返っているという。

新型ゴーストのコンセプトは「ポスト・オピュレンス」

そういう背景を経ながらフルモデルチェンジが施された新しいゴースト。そのコンセプトはポスト・オピュレンス。日本語的には脱・贅沢ということになる。世間的には贅の極みのような立ち位置のブランドが、そういうことを意識し始めた背景は、デコラティブよりミニマルであるとか、物質・物量より体験とか、そういった豊かさの解釈の移ろいを、ロールスのエグゼクティブたちも顧客層との対話から肌身で感じ取っていたからだという。こちら側から見ていれば気高きプライド任せのプロダクトアウトといったイメージを抱くわけだが、ロールスは自らの顧客の要望に対しては徹底的に耳を傾ける、そんなメーカーだ。

全く新しいアークテクチャーで作られタイトでシャープになった新型ゴースト

前型からのバトンタッチに際して受け継がれた部品は、ピラーに収められた傘とボンネットの先に立つフライングレディのマスコットのみ。完全に新しいアーキテクチャーで作られた新型ゴーストは、実はその佇まいからしてミニマルを体現している。象徴的なパルテノングリルは若干小さくスラント気味にノーズにインサートされ、ボンネットやトランクのフードはボディラインとの一体感が高められた。新旧を比べてみると全体的にタイトさとシャープさが加わり、スキッとした印象になったことが伝わってくる。常に変化を控えめに表現してきたロールスとしては、割と思い切ったシフトだと思う。とはいえ、フリーハンドのコーチラインやバイカラーへの塗り分けなど、ロールスらしいフィニッシュワークはすべて健在だ。

内装は前面をブラック統一で引き締め、ロールスロイスの代名詞スターライトヘッドライナーも健在

内装のデザインは基本的に他のモデルとも同調する、どこからみてもロールスというものだが、フル液晶のメーターパネルからインフォテインメントのモニター、そして助手席側オーナメントまでを一直線にブラックで統一して印象をグッと引き締めるなど、ならではなアプローチも散りばめられた。ウッドトリムには従来からのグロッシィなものばかりではなく、杢の孔の感触を活かしたオーガニックなサテンフィニッシュを用意したりと、時代的嗜好に沿ったものも用意される。今やロールスの代名詞ともいえるオプションのスターライトヘッドライナーには、流れ星がランダムに現れるという微笑ましいギミックも加えられた。

音や振動環境を整えるため静寂性をさらに向上させたエンジン

搭載するエンジンの形式は先代と同様、V12ツインターボだが、排気量は6.75lと若干拡大している。当然中身的には色々とリファインされているわけだが、たとえば静粛性向上のために吸気側の口径を広げました・・などと、それらはおしなべて音・振動環境を整えるための手段と言わんがばかりのところがなんともロールスらしい。前型に対すれば発揮されるパワーは1PS、トルクは70N・mと地味に向上している。数字への無頓着ぶりが伝わってくるが、新たに採用された4WDシステムの効果も相まって、0〜100km/h加速は4.8秒と、スポーツサルーンも名乗れるほどのポテンシャルを有している。

エクステンデッドホイールベースはファントムと同格の全長

ロールスのラインナップにおいて頂点に立つモデルといえばファントムだが、新型ゴーストはそれに比べると車格的な差はさほど大きくない。彼らで言うところのEWB=エクステンデッドホイールベース、つまりロングボディを選べば全長は標準ボディのファントムとほぼ同格となる。大きく異なるのは全高で、つまりファントムは天地を威厳ある佇まいや後席居住性に巧く活かしているわけだ。これは着帽時の乗降や居住性を意識した、いかにもイギリスらしい伝統に沿った歴史あるプロポーションでもある。
対すればグッと低く構える新型ゴーストだが、後席は前席に対して座面が一段高いシアターポジションがしっかりと採られていて、前方の見通しはしっかり確保されている。ファントムは後席乗員の寛ぎや周囲からの秘匿のために、Cピラーを巧くパーティション的に用いているが、新型ゴーストは小窓がちょうど顔の位置にくるなど、後席はやや開放感を意識した設えだ。

新機能満載の比類ない乗り心地

乗り心地は考えうる限り比類するものはない。それほど丁寧に鞣されている。今ならフィントムをも脅かすレベルかと思わせる理由のひとつはプラナー、すなわち路面を徹底的に平滑に感じさせるために投入された数々の技術だ。前方の路面サーフェスをスキャンして凹凸に合わせて減衰力を事前に適応させる機能や、足回り骨格由来の微かな振動やノイズ成分を取り除くオリジナルのマスダンパーの採用など、これでもかと新しいアイデアを投入している。そういう意味では低速域の取り回し改善を主目的とする4WSも、中高速域では走行安定性に積極的に寄与しており、柔らかな乗り心地のまま軽快な操舵応答を実現する一助となっているようだ。

新型ゴーストのブランドイメージを超越したハンドリング

そして新型ゴーストの一番の見せ場は、なんといってもハンドリングだ。その曲がりっぷりの良さはロールスのブランドイメージを大きく超越している。しかもエンジンの回転フィールや操舵の感触の滑らかさは異質なほどに上品で、そんなインターフェースを持つクルマでここまで走り込めるのかというギャップに新鮮味も感じられる。もちろん4WSの効果は、このロールスオリジナルのシャシーの素性が、実は相当にスポーティに躾けられていたことを改めて思い知った。

究極のスポーツラグジュアリー

「ゴーストのユーザーは日常的に自らそれをドライブする、もしくは平日はショーファードリブンでも週末は家族を乗せて自らステアリングを握る方々が大半です。ゆえに、走りへの期待値は相当に高いんですね」
プロダクトマネージャーは新型ゴーストのプロファイルを説明する際、こういう事例を紹介してくれた。高級車の頂点というプライドを、顧客への忠誠とどのようにすり合わせていくか。その課題を、究極のスポーツラグジュアリーの表現として示す。それが新型ゴーストの核心ということになるだろう。

文/試乗〇渡辺敏史

ロールス・ロイス・ゴースト
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5546×2148×1571mm
ホイールベース:3295mm
車両重量:2490kg
駆動方式:4WD
エンジン:6.75リッターV12 DOHC 48バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:571PS(420kW)/5000rpm
最大トルク:850N・m(86.7kgf・m)/1600-4250rpm
タイヤサイズ:(前)255/40R21/(後)285/35R21(ピレリPゼロ)
価格:3590万円~

ロールスロイス
https://www.rolls-roycemotorcars.com/ja_JP/home.html

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