よりラグジュアリーに進化したトゥールビヨン エアロダインの後継機

新作の最新情報

4月21日に発表された「RM 21-01 トゥールビヨン エアロダイン」をご紹介します。
腕時計業界の最前線で活躍する時計ジャーナリストで、クロノス日本版の編集を担当する鈴木裕之さんと、リシャール・ミルのアフターサービスを担当しスイスの工房へも年に数回訪れトレーニングを受けている本社公認の時計技術者、竹中茂喜さんに、新作モデルを徹底解析していただきました。

異色のラグジュアリートゥールビヨン


2009年に発表された「RM 021 トゥールビヨン エアロダイン」は、リシャール・ミルが手掛けてきたエクストリームリー・トゥールビヨンの中でも異色の存在だった。

▲RM 021 トゥールビヨン エアロダイン

軽量・高剛性を目し、航空宇宙産業などで広く用いられてきたハニカム構造のコンポジット材料を地板や香箱などに用いながら、ケースは重い18Kホワイトゴールド製。この事からも、結晶分子構造の一つである斜方晶系(現在では直方晶系の訳語が一般的)を持つチタンアルミナイド製のハニカムを用いた意図はハイテクの象徴であって、実質的にはラグジュアリートゥールビヨンの現代版を目指していたことが想像できる。

ハニカム構造に新採用された耐酸化性、耐熱性に優れた特殊素材「Haynes®214®」

2021年の新作として登場する「RM 21-01 トゥールビヨン エアロダイン」は、よりラグジュアリーに進化したエアロダインの後継機だ。ムーブメントの基本構造は同一だが、グレード5チタン製のブリッジに組み込まれるハニカム構造には、米国ヘインズ・インターナショナル社が開発した「Haynes ®214®」合金が新たに採用されている。クロム、アルミ、鉄などを含有するこのニッケル基の合金は、約950℃以上の超高温環境における耐酸化性に優れる特殊素材。この素材は、軍用車両のバーナーカップのほか、発電等のためのガスタービンにも使用されている。レーシングマシンの排気系などに用いられるインコネルなどが組成としては近いようだ。もちろん、そんな超高温環境下に時計が置かれることはないから、これはリシャール・ミル流にアレンジされた、進化したハイテクの象徴だ。連続成型積層によってハニカム状にされた「Haynes ®214®」材には、独自性を引き立てるためのブルーPVD処理が加えられている。

軽量・高強度を実現させるハニカム構造のメリット

もちろん、こうしたハニカム構造自体には、きちんとした意味がある。RM 21-01の地板や受けには大胆な肉抜きが施されているが、ここにハニカム構造を組み込むことで、十分な強度を確保することができるのだ。ハニカム構造を用いることで軽量・高強度が達成される理由は、正六角形が最も効率的な平面充填を可能とするためだ。
ちなみに同一の面積で、外周長が最も短くなる図形は円である。一方、同一の図形で平面を敷き詰めることを平面充填と呼ぶが、円ではこれが不可能だ。平面充填ができて、面積に対する外周長が円の次に短くなる図形が正六角形なのだ。
ちなみにこれは分子構造レベルでも同様で、炭素同士が六角形に結合した状態の素材を、リシャール・ミルでもお馴染みの「カーボンナノチューブ」と呼ぶ。

独特なベゼルデザインが導いた魅惑的なバイカラーケース

もうひとつ、RM 21-01の個性を引き立たせるのは、カーボンTPT®と18Kレッドゴールド(5N)で構成されたバイカラーケースだ。特にRM 021からデザインを受け継いだベゼルには、もともとステップ状のアクセントラインが設けられており、リシャール・ミルでは珍しく「正面から見てもバイカラー」という構成が実現されているのだ。

ここ数年、ラグジュアリーウォッチの世界で再び注目されているバイカラーケース。いまリシャール・ミルがRM 021の後継機を開発した本当の理由が「最も魅力的なバイカラーモデルが作りたかった」というのは、筆者の考えすぎだろうか?

文.鈴木裕之(すずき・ひろゆき)
1972年生まれ、東京都出身。フリーライター。時計専門誌『クロノス日本版』を中心に執筆。時計業界歴20年。共著に『ALL ABOUT RICHARD MILLE リシャール・ミルが凄すぎる理由62』(幻冬舎)がある。

リシャール・ミル アフターサービス 時計技術者がみるココがスゴイ!

ケースに使用されているカーボンTPT®の部分にぜひ注目して下さい。ベゼルの両サイドとミドルケースのピラー(柱)はそれぞれ独立したパーツとなっています。
そのため、使用する部品の数も多くなり、目視できるだけでベゼル部分はネジ入れて23個、ミドルケースは9個の部品が使用されています。2009年に発表されたRM 021は、シンプルさを追求していたためベゼルとミドルケースはたったの3個のパーツで構成されていました。
部品の数が増えることで、手間とコストは増えますし、カーボンTPT®で細かなパーツを制作する技術力も必要です。妥協なくデザインを追求するリシャール・ミルの神髄ともいえるモデルではないでしょうか。

▲RM 021 トゥールビヨン エアロダインのケースサイド

▲RM 21-01 トゥールビヨン エアロダインのケースサイド

▲RM 21-01 トゥールビヨン エアロダイン

文.竹中茂喜(たけなか・しげき)
時計修理技能士1級を持つリシャールミルジャパン テクニカルマイスター。年に数回スイス、レ・ブルルーにある工房でトレーニングを受けリシャール・ミルを熟知するひとり。

「RM 21-01 トゥールビヨン エアロダイン」

手巻き(Cal.RM21-01)、カーボンTPT®×18KRGケース、ケースサイズ42.68×50.12×14.30mm、
ラバーストラップ、50m防水、世界限定50本。99,550,000円(税込予価)

問い合わせ先:リシャールミルジャパン
TEL.03-5511-1555
https://www.richardmille.com/ja

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