遠藤大輔がつなぐ京都とパリ ─ ENYAAで響き合う京の心と泡

写真/文: 櫻井朋成
Photo/text: Tomonari Sakurai

パリ1区モンパンシエ通り。
16世紀に建てられた歴史ある建物──劇作家モリエールの生家と伝わるその一角に、京都の精神を受け継ぐレストラン「ENYAA(エンヤ)」がある。

京都の香とパリの気配が溶け合う空間


厚い石壁の奥に広がるのは、白木と灯りが織りなす静謐な空間。京都の香とパリの気配が、ここでひとつに溶け合う。
その中心に立つのが、遠藤大輔シェフ。
京都の名料亭「吉泉(きちせん)」で研鑽を積み、京割烹「祇をん 八咫」で料理長として経験を重ねた。二十年以上にわたり懐石の世界で磨き上げた感性は、出汁を軸にした「引き算の美学」と、季節を映す料理の哲学に裏打ちされている。

遠藤シェフの新たな挑戦


現在、遠藤シェフはその技と精神を携え、パリの地で新たな挑戦を続けている。
ENYAAの誕生は、ワイン・日本酒のスペシャリスト杉山明日香氏、そしてシャンパーニュのスペシャリスト 中村快氏との出会いがきっかけだった。
三人は京都とパリを結ぶ“食の対話”をテーマに、京料理と酒の調和を追い求める場所をつくり上げた。店の中心にあるのはあくまで遠藤シェフの料理であり、彼の手と時間がこの空間のすべてを形づくっている。

ブルターニュ産にこだわった素材


魚介は鮪を除きすべてブルターニュ産、鮪はバルセロナ直送、雲丹はアイスランド産。
「ブルターニュの雲丹より甘みがあって、一番好きなんです。剥くだけでなく、その後の処理にも手をかけています」と遠藤シェフ。
素材を見極め、余計な手を加えずに味を整える──その姿勢は、京都で培った静かな研ぎ澄ましの延長線にある。

京のだしと共鳴する泡と酒、酸と旨味


ENYAAでは、酒もまた料理の一部として設計されている。
シャンパーニュのミネラル、日本酒の旨味、それぞれが京の出汁と共鳴し、皿の流れをやわらかく結ぶ。
泡と酒、酸と旨味、その微妙な均衡を保ちながら、料理が時間の中で呼吸する。

この土地で手に入る食材に、京都の感性を通わせる


「京料理をパリでやる」ことを目的とせず、いまこの土地で手に入る食材に、京都の感性を通わせる──
それが遠藤シェフの言う“ENYAAの料理”である。

京料理と鮨の共演


今回撮影したのは、その哲学を象徴する特別な晩。
テーマは「京料理と鮨の共演」。
もともと鮨を握る予定はなかったが、客との対話の中から“ここでしか味わえない鮨”が自然と生まれた。


フランスの海と山の恵みを京の技でととのえ、米と出汁と泡がひとつの物語を紡ぐ。
それは、遠藤大輔という料理人が歩んできた道の延長であり、未来への静かな一歩でもある。


京都の伝統とパリのテロワール、料理と酒、そして時間と対話。
すべてのあいだに流れる静けさの中で、遠藤シェフは今日も一皿を仕立てる。
ENYAA──その名のとおり、“前へ”と進む祈りの声が、ここに息づいている。

ENYAA 情報

店名:ENYAA(エンヤ) / ENYAA Saké & Champagne
住所:37 rue de Montpensier, 75001 Paris(パレ・ロワイヤル至近).
営業時間:水–日 12:00–14:00/19:00–22:00(月・火 休).
電話:+33 (0)1 40 26 78 25 メール:contact@enyaa-paris.com.
公式サイト:enyaa-paris.com(レストラン情報)/enyaa-paris.fr(セラー&オンライン).
SNS:Instagram @restaurant_enyaa.

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16世紀の家屋、モリエールの生家と伝わる一角に、ENYAAが静かに灯る。京都の美意識が、パレ・ロワイヤルの記憶と響き合う。

櫻井朋成

写真家。フォトライター

フランス在住。フォトグラビュール作品を手がける写真作家。
一方で、ヨーロッパ各地での撮影取材を通じて、日本のメディアにも寄稿している。

フランス在住。フォトグラビュール作品を手がける写真作家。
一方で、ヨーロッパ各地での撮影取材を通じて、日本のメディアにも寄稿している。

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