「上海蟹の姿蒸し」。蒸したての熱々が最高だ。専用のハサミとスプーンで殻を割り、身を押し出し、口へと運ぶ過程も楽しい。
2002年、上海にオープンした「蟹王府」が2020年12月、東京・日本橋に上陸。創立60年以上の歴史をもつ上海蟹専門企業のグループ店という強力なバックボーンを武器に、極上の上海蟹コースを提供する。
日替わり「冷菜三種」。2019年にミシュラン1ツ星を獲得した上海の本店でもスペシャリテとして人気の「氷結蟹」は絶品。活け蟹を特製ソースに漬けた後、マイナス40℃で急速冷凍。メロンのニュアンスを感じる蟹肉と蟹味噌のシャーベットが口の中でとろけると同時に、蒸留酒の華やかな香りが鼻から抜けていく。
中央通りの裏手にある「蟹王府 日本橋店」は店名の通り、一年を通して毛蟹、ズワイガニ、たらば蟹など、蟹が主役の料理を出す、中国料理店である。なかでももっとも盛り上がるのが、秋から初冬にかけて旬を迎える上海蟹の季節だ。上海に本拠地がある自社で育て、輸入した上海蟹を生きたまま空輸。2019年にミシュラン一つ星を獲得した上海の本店同様のスペシャルも登場する「上海蟹フルコース」27,500円など、蟹を知り尽くす専門店ならではの、美味を提供する。
濃厚な味わいの「南蘇名物 夫婦蟹味噌ソースかけご飯」は通年メニュー。
そのコースはスペシャリテのオンパレードと言っていい。上海蟹はオスの白子、メスの卵がとりわけ珍重される。ここでは、それらを贅沢に合わせてバルサミコ酢で調味。「南蘇名物 夫婦蟹味噌ソースかけご飯」は、香ばしいタイ米と相まって、何度でもお代わりしたくなるほど。なんと1人前につき、5〜6匹分の蟹味噌と白子が使われている。
濃厚な「蟹肉たっぷりフカヒレの姿煮」。途中、蟹酢を加えると、味が締まる。
その後、キノコと白菜のさっぱりしたスープを挟み、「上海蟹の姿蒸し」となる。11月はオスとメスが同時に最盛期を迎える。メスの卵、オスの白子、クリーミーな脚の身、まるで栗のように香ばしい香りがする爪の身など、部位ごとの違いを食べ比べるのも楽しい。
その後、ぐつぐつと音を立ててやってくるのは「蟹肉たっぷりフカヒレの姿煮」だ。独特な舌触りが特徴の毛鹿鮫(モウカザメ)を使用。ネギ、生姜、上海蟹の脂で風味を出したコクのあるスープに蟹肉をたっぷり加えた餡を絡めていただく。とろりとした餡とプルンとしたフカヒレの食感のマッチングも素晴らしい。
「蟹の濃厚白子味噌と板春雨の煮込み」。板春雨が蟹の旨味をしっかり吸っている。
上海蟹料理はまだまだ続く。本店のスペシャリテ「蟹の濃厚白子味噌と板春雨の煮込み」は今秋、日本初デビューの一品。上海蟹の白子と板春雨の煮込みには口直しとして、カリッと揚がった胡麻団子が添えられる。そのおかげで、次々出てくる上海蟹の料理を、飽きずに食べられるのだ。その後、「蟹肉入り春巻き」や鮑のソース煮などが出て、デザートまで。1人あたり、約20匹の上海蟹を食べ尽す計算になる。あらためて、上海蟹の多面的な魅力と中国料理の奥深さに圧倒される。
また、フランスの銘醸ワインを中心としたペアリング、紹興酒などの洗練されたセレクションのおかげで、食事のひとときがさらに豊かに感じられる。
ダイニング54席、個室4室(6席×3室、8席×1室)。
店内は明るく広々としたメインダイニングのほか、モダン・チャイニーズテイストのラグジュアリーな個室もあり、プライベートやビジネスディナーなど、さまざまなシーンで利用しやすい。
また、ランチでも「蟹肉入り麻婆豆腐」「上海蟹ソース担々麺 」など魅惑のメニューが楽しめる。上海蟹の旬がピークを迎える今、ぜひ、1度は訪れてほしい。
蟹王府 日本橋店(シェワンフ ニホンバシテン)
東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号 三井二号館1F
TEL03-6665-0958
11:00〜14:00LO、17:00〜21:00LO
定休日:施設に準ずる
https://www.shintai.co.jp
ランチ1,980円〜、コースは昼16,500円〜、夜27,500円(全て税込・サービス料別)〜。
アラカルトもあり。個室利用は要問い合わせ。