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壮大なスケールでのインスタレーションを体験する―「大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ」

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国立新美術館にて、「大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ」が開催されます。これまでのシリーズをかつてない規模に拡大した最新インスタレーションや、世界を揺るがせたパンデミックのさなかに始められた映像による新作が展示され、大巻伸嗣が創り上げる総合芸術をかつてない規模で体感できる機会となります。

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Gravity and Grace, 2019

「存在すること」を問い続ける現代美術家

大巻伸嗣は、1971年に岐阜県で生まれました。これまで「存在」とは何かをテーマに、環境や他者といった外界、記憶や意識などの内界、そしてその境界にある身体の問題を探求している現代美術家です。大巻は身体の感覚を揺さぶるべく大規模なインスタレーションを創り出し、その空間で鑑賞者は、外界と内界の相互作用や、時間と空間における揺らぎを、身体的な感覚とともに多義的に経験します。大巻は、そのようなスケールの大きな作品を、日本だけでなくアジアやヨーロッパなど、世界各国で発表し、高い評価を得てきました。また、地域を活性化するアート・プロジェクトから舞台芸術まで、多くの人々と協働して空間を変容させるさまざまな現場でも比類のない資質を発揮しているアーティストです。

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大巻伸嗣ポートレイト
Pic by paul barbera / where they create

大巻は、現代社会がどのような歴史を経て今に至り、現在どのような問題を抱えているかを深く考察し、それをもとにインスタレーションの着想を得てきました。また、光と闇を重要な要素とする大巻の空間は、太陽のリズムとともに在るこの世界を象徴するかのような始原的な感覚を湛えています。この始原性とも関わるのが、大巻が好んで用いてきた繊細かつ濃厚な装飾的造形です。人間は、自然を抽象化した文様を身近なものとすることで、自然に寄り添って生きてきました。大巻のインスタレーションは、現代社会に対する優れた批評である一方、人間に普遍的にそなわる根源的な造形志向を色濃く反映しているとも言えるのです。

本展覧会は、国立新美術館で最大の、天井高 8m、2000㎡ にも及ぶ展示室をダイナミッ クに使って開催されます。この広大な空間でなければ展示できないインスタレーションは、観客の身体的な感覚と強く響き合い、細分化した世界に生きる私たちが失った総合的な生の感覚を喚起することでしょう。展示には、映像や音響、そして詩も用いられるほか、会場内でのパフォーマンスも予定されています。

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Gravity and Grace, 2018

大巻の精神的深化を示すインスタレーション

今回の展示では、2016年に始まったシリーズ〈Gravity and Grace〉の最新バージョンのほか、私たちはなぜ生きるかという根源的な問いに基づく新作も発表される予定です。

〈Gravity and Grace〉は、さまざまな動植物からなる文様を施された大きな壺から放たれる強烈な光と、それが生み出す影で構成される作品です。ここで大巻は、原子力が引き起こした未曽有の人災に、核分裂反応の爆発的なエネルギーの象徴とも言える、最大 84 万ルーメンにも達する強烈な光で応答しています。大巻は、この魅惑的な光と、そこに文字通り吸い寄せられる人々の姿を通じて、エネルギーに過度に依存した今日の社会を批評しています。

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Gravity and Grace, 2023
Photo courtesy of A4 Art Museum

2011 年の東日本大震災とそれに付随して起きた福島の原発事故は、大巻にも大きな衝撃を与えました。〈Gravity and Grace〉で大巻は、原子力という諸刃の剣を抱える私たちの社会を表現しています。また、近年、言語学の様々な領域の研究者にインタビューを重ねて、私たちの意識と切り離せない「言語」をリサーチするなかで、「生きるとはいかなることか」を考察してきました。その一つの答えとして、新型コロナウイルス感染拡大の時期に制作された、新作の映像インスタレーションが発表されます。本展覧会は、3.11とパンデミックに挟まれた約 10 年の間に大巻が探求してきた、文明と自然、生と死への考察の深化を示しているのです。

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左/Gravity and Grace(部分), 2023
Photo courtesy of A4 Art Museum
右/Gravity and Grace(部分), 2018

内省を促すような圧倒的空間と繊細なドローイングの対比

本展覧会は、国立新美術館の最大級の展示室で行われますが、大巻は、その空間的な広がりを最大限に生かした 3 つの大きなインスタレーションを構想しました。大巻が創り出す空間はしばしば、身体を凌駕する大きさの効果とも相まって、そこに身を置く者に深い内省を促すような崇高な感覚を与えます。また、この圧倒的な空間を創出するために大巻が無数に描き残してきたドローイングも併せて展示されます。大巻はドローイングを通じて、その場に漂う気配をつかみとり、空間の広がりや運動、光と影の交差などを確かめてきたのです。ダイナミックなインスタレーションと繊細なドローイングの対比も、本展覧会の見どころのひとつです。

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Rustle of Existence, 2023
Photo courtesy of A4 Art Museum

演劇作品の中に入り込んだかのような詩的空間

空間における身体、また、他者との身体的関係に深い関心を寄せる大巻は、近年、「Rain」(2023 年、愛知県芸術劇場、新国立劇場ほか)の舞台美術を手掛けるなど、演劇の分野にも活躍の幅を広げています。そもそも大巻のインスタレーションは、光と闇のコントラストや、舞台のような設えの空間に観者を導きいれる点で、演劇を強く想起させます。その空間に足を踏み入れると、観客であると同時に、演者の一員のような感覚に陥るのです。会期中には、会場内でパフォーマンスも行う予定で、大巻が近年、言語に新たな着想を得ていることから、詩人の関口涼子とのコラボレーションも企画されています。関口の言葉が大巻のイメージの世界と並走することにより、そこに新たな深度が生み出されることでしょう。

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「大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ」
会期:2023年11月1日(水)〜12月25日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室2E
住所:東京都港区六本木7-22-2
時間:10:00〜18:00(毎週金・土曜日は 20:00まで、最終入場時間は閉館30分前まで)
休館日:毎週火曜日
観覧料:無料
https://www.nact.jp/exhibition_special/2023/ohmaki

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