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伝説のデザイナー倉俣史朗のデザインの先にあるものを掘り下げる「倉俣史朗のデザイン――記憶のなかの小宇宙」展

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1934年に東京で生まれ、56歳でその早すぎる生涯を終えた倉俣史朗。主に70年代以降に発表された飲食店や店舗デザイン、家具などの作品は、センセーショナルな造形から話題となり今でも色褪せず愛され続けています。しかしその早すぎる死や、日本よりヨーロッパでの評価の高さゆえ、倉俣の業績を検証するような大規模展は、近年開かれていません。2021年に没後30年を迎え、今改めて、伝説のデザイナー倉俣史朗という人とその作品を検証し、独創的で詩情あふれるデザインを読み解く展覧会が「倉俣史朗のデザイン――記憶のなかの小宇宙」です。

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倉俣史朗《引出しの家具》1967年 富山県美術館蔵
© Kuramata Design Office

果たしてデザイナーかアーティストか

倉俣史朗は、1934年に東京で生まれました。駒込にある理化学研究所内で育った幼年期の思い出と、第二次世界大戦中の疎開先での光景が、その後の倉俣のデザインに影響し続けます。1956年に桑沢デザイン研究所を卒業。株式会社三愛の宣伝課で店舗設計、ウィンドウディスプレイなどの仕事に携わり、1965年にクラマタデザイン事務所を設立します。
高松次郎や、横尾忠則らと協業した内装など、次々と話題となる店舗デザインを発表し人気を博し、1970年には日本万博博覧会に参加し、1972年、毎日産業デザイン賞を受賞。1980年以降はデザイナーのエットレ・ソットサスが中心となっていたイタリアのデザイン運動「メンフィス」に参加しました。

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倉俣史朗《アクリルスツール(羽根入り)》1990年 京都国立近代美術館蔵 撮影:渞忠之
© Kuramata Design Office

倉俣史朗のデザインの特徴の一つは、その素材使いにあります。富山県美術館所蔵の椅子《ミス・ブランチ、1988年》に代表されるように、アクリル、ガラス、建材用のアルミなど、家具やインテリアデザインの世界ではなかなか用いられることのなかった工業素材に独自の感性を乗せた作品は、特に1970年代以降、世界的な注目を集めました。作品の中には機能的ではないものもあり、インテリアデザイナーなのかアーティストなのか評価が分かれることも興味深い点です。

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左/倉俣史朗《ミス・ブランチ》1988年 富山県美術館蔵 撮影:柳原良平
© Kuramata Design Office
右/倉俣史朗《硝子の椅子》1976年 京都国立近代美術館蔵 撮影:渞忠之
© Kuramata Design Office

少なすぎる展覧会ゆえの伝説化

没後30年を超える今でもなお、比類ないデザイナーとして揺るぎない評価を得ている倉俣ですが、国内美術館での紹介は決して多いとは言えません。没後5年にあたる1996年に原美術館から始まり、世界を巡回した回顧展、そして2011年に、21_21デザインサイトでのエットレ・ソットサスとの二人展、2013年には埼玉県立近代美術館が開催されましたが、その後大規模な展覧会は開かれていないのが現状です。
また倉俣史朗について、磯崎新や三宅一生といった同時代に仕事をした世界的デザイナーがたびたび言及するものの、その業績を見られる機会は多くありませんでした。今回の回顧展では、作品を包括的に見られる貴重な機会となるのはもちろん、これまであまり公開されてこなかったスケッチや夢日記など倉俣史朗のパーソナルを知ることができる資料も含めた展示が見られるまたとない展覧会となるでしょう。

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左/倉俣史朗《ハウ・ハイ・ザ・ムーン》1986年 富山県美術館蔵 撮影:柳原良平
© Kuramata Design Office
右/倉俣史朗 イメージスケッチ「猫とHow High the Moon」 1980年代 クラマタデザイン事務所蔵
© Kuramata Design Office

没後30年を越えて改めてそのデザインの源を回顧する

「記憶のなかの小宇宙」では、作家の内面や思考の背景にある「倉俣史朗自身」を一つの軸にし、初期から晩年までの作品を「倉俣史朗自身」と紐づけながら紹介することを試みます。2021年に没後30年を経たことも一つの契機として、同年代を生きた時代だけでなく、若い世代にも倉俣史朗という人とその仕事を伝える良い機会となるでしょう。

本展では、まずプロローグとして独立前の三愛所属時代の仕事を紹介します。この時代の倉俣の仕事を見る機会はこれまでなかなかなかったので、デザイナーとして開花する直前の倉俣の仕事を垣間見られるまたとないチャンスです。その後、年代を4つのパートに区切り、倉俣の仕事をテーマごとに展示します。
特に「倉俣史朗の私空間」として展示される、愛蔵の書籍とレコードは必見です。エピローグでは、これまであまり公開されてこなかった夢日記や言葉をまとめて紹介することで、倉俣史朗のデザインの先にあるものを検証します。

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倉俣史朗 ショップ「スパイラル」 1990年 撮影:淺川敏
© Kuramata Design Office

海外で高まるその評価

2021年に香港に開館したM+。20世紀、21世紀の視覚芸術をテーマにしたアジア初の美術館で、総展示面積は17,000㎡と、圧倒的なスケールを誇ります。そのM+に、倉俣史朗がインテリアデザインを手掛けた新橋の寿司店「きよ友」がまるごと移設されたことは大きなニュースとなりました。このように倉俣の作品は海外での評価が高く、倉俣史朗の家具も、海外の家具メーカーによって復刻・販売されています。
本展は造花の薔薇をアクリルに閉じ込めた《ミス・ブランチ》だけではない、倉俣史朗のデザインに対する世界的評価も再確認できる展覧会となっています。

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倉俣史朗 スケッチブック「言葉 夢 記憶」より 1980年代 クラマタデザイン事務所蔵
© Kuramata Design Office

また、デザインの先駆性が高く評価される倉俣史朗ですが、何がアイデアの根源にあったのでしょうか。今回の展覧会では、独立前に三愛で手掛けていた仕事から、デザインという形にはなっていないただ断片的に書き留められたままのスケッチや夢日記を紹介することで、その創作の源泉と秘密に迫ります。同時に倉俣自身の言葉を紹介することで、伝説という名の下に隠されていた倉俣史朗個人に迫る、これまでの倉俣展とは一味違う、展覧会となります。

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倉俣史朗 イメージスケッチ「ミス・ブランチ」 1980年代 クラマタデザイン事務所蔵
© Kuramata Design Office

会期:2023年11月18日(土)〜2024年1月28日(日)
会場:世田谷美術館
住所:東京都世田谷区砧公園1-2
時間:10:00〜18:00(最終入場時間 17:30)
休館日:毎週月曜日および年末年始(2023年12月29日(金)~2024年1月3日(水))
※ただし、2024年1月8日(月・祝)は開館。1月9日(火)は休館
観覧料:一般1,200円、65歳以上1,000円、大高生800円、中小生500円
※本展では、日時指定券を11月1日(水)より販売します。
https://www.setagayaartmuseum.or.jp

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