19世紀ジャポニスムを牽引したクリストフル
クリストフルはフランスの老舗シルバーウエアブランドですが、その作品はヨーロッパの芸術と多くのアーティストにより培われ、ブランドの信念である「伝統と革新」を具現化することにより創られてきました。
19世紀には西欧諸国で「ジャポニスム」のムーブメントが起こりました。クリストフルはそのムーブメントを牽引し、数々のジャポニスム作品を制作し、19世紀のフランス社会に新たに誕生したブルジョワジーたちに愛されたのです。日常使いできる美術品としてブランドの発展に貢献したのがジャポニスムの作品だったのです。
そしてこの度、その歴史あるジャポニスム作品に新たなコレクションが加わりました。それが、漆工芸の第一人者である箱瀬淳一氏とコラボレーションをした「MOOD Christofle x Junichi Hakose」です。
表現したかったのは新しい形の伝統
MOODは卵型のケースにカトラリーが収められたクリストフルを代表するカトラリーセットですが、そのケースやカトラリーの柄部分に箱瀬氏による漆塗りを施し、蒔絵で彩ったのが「MOOD Christofle x Junichi Hakose」です。こちらはそれぞれ異なる7つのデザインで構成され、遂に最後の作品である蝶をモチーフとした「野の花と蝶」が発表されコレクションが完成しました。
「今回、クリストフルとコラボレーションをするにあたり、どのような“伝統”を表現したいか考えた時、やはり日本の伝統的文様にその思いを込めたいと考えました。7つのテーマに選んだモチーフ、<菊>、<桜>、<宝尽くし>、<龍>、<鳳凰>、<天馬>、<蝶>はどれもが日本の伝統的文様です。私は今回に限らず、漆工芸、蒔絵というものに向き合う時、常に、今生きている私が描き、継承し、次の世代に新しいものとして残していくことが大切だと考えています。伝統の中に新しい何かを描き、新たな伝統として次世代に繋いでいく。今回の作品にもまた、朱の色味、ぼかし、線、金銀の色味、表情、空間、その一つ一つに私が表現したい“新しい形の伝統”の息吹を吹き込みました。」
遂に完成した「野の花と蝶」
蝶はその可憐かつ、姿を変え成長する姿から、再生や不滅を象徴する幸運のシンボルとされてきました。
「日本の蝶の種類は240種とも言われ、北海道から沖縄までさまざまな気候と地形が多くの種類の蝶を育んできました。そんな蝶を人は謳い、絵にしてきたことは自然なことです」と箱瀬氏。
「古くから描かれてきた蝶ですが、今では絶滅危惧種に指定されるものも珍しくはなく、今一度、蝶を描き、古の人たちがどういった気持ちで蝶を描いてきたのかを知りたいと考え、7作目の題材を蝶にしました。輪島では、2000kmも旅をするアサギマダラを見かけます。2枚の羽でそんな長距離を飛んでくることは信じがたく、まさに国をまたいで飛来する我々の文化を象徴しているかのようです。この蝶を描くことで、世界の人々への興味を引き出し、橋渡しになってくれれば嬉しく思います。」
ケース、そしてカトラリーの一本一本には、春に芽吹く蔦を唐草として表現し、菊と紅葉は秋を表し、この2つを合わせ春秋文様として描かれた野の情景は、羽ばたかんばかりの蝶を引き立て、静かに佇みます。
作者が最もこだわり技術を要したのが、漆では表現が難しいグレーでした。また最も表現力と技を要したのが、いかに蝶を引き立たせるかでした。唐草を描くことで、蝶、そして菊や紅葉を引き立たせました。 1本1本の線に張りを持たせ、優しさと緊張を出そうとしたのです。
「野の花と蝶」
▲世界限定8点、¥7,535,000
それぞれまったく異なる全7作のコレクション
「MOOD Christofle x Junichi Hakose」は、「野の花と蝶」を含む全7作のコレクションで構成されます。それぞれに趣の異なる色使いとデザインで、人々の心を魅了します。
「野の小菊」
菊は日本で最も古くから描かれて桜と同様に非常に愛されている花文様で、長寿の願いを込めた瑞祥文様です。こちらは蒔絵の技法の中でも立体感を与える研ぎ出しが光る逸品で、ところどころにヤコウガイを花の中心に据え、青い光が新たな表情を加えています。
この作品には、日本ならではの空間美が施されています。間や空間を美と据える“引き算の美”が菊の文様の重なり方にも見て取ることができます。
菊の花が、まるで吸い込まれていくかのように段々と薄い線と色で消えていく様子もまた、見る人にそれぞれの夢物語を空想させることでしょう。
▲世界限定1点、売約済み
「吉野桜」
日本を代表する桜の名所奈良の吉野山に山一面に咲く吉野桜を描いた作品。この作品にも日本ならではの空間美が施され、その間を作ることから山桜がまさに今舞い落ちるかのような躍動感を感じさせる配置と配色となっています。
花は一つとして同じ配色の物はなく、ピンクの濃淡、金と銀粉の蒔く加減、またケース上部の漆の黒に浮き出るようなピンクの花びら、下部の赤との対比により明るい発色の桜が描かれ、一つの作品から様々な桜の表情が窺えます。カトラリーは、あえて落ち着いた表情で朱色の上に金と銀の桜を描きました。
▲世界限定8点、¥7,920,000
「祝の宝尽くし」
宝尽くしは、中国から室町時代に日本に伝えられた日本の伝統的文様で、様々な宝物を描いた縁起のよい吉祥文様。七福神の大黒天が持ち、振れば欲しいものが手に入るという縁起ものの「打出の小槌」、平安時代に希少価値の高いスパイスとして日本に渡来したクローブはその希少性から吉祥文となった「丁字」や「分銅」、「宝巻」、「巻軸」、「隠れ蓑」、「隠れ笠」、「金嚢」など、様々な縁起物が描かれています。それらに加え、今の宝、50年後の宝を描きたいという作者の思いを込めて、縁起の良い文様である黒く締まる羽が印象的な「鶴」、「松竹梅」なども描かれています。
明るくも上品な朱色と文様を締めるように、落ち着いた金の線を描き、上部には赤みを帯びた金箔が光りと共に作品を華やかな印象に演出し、今と未来を感じる祝いの宝尽くしです。
▲世界限定8点、¥6,270,000
「天の龍」
古代中国では、邪気を追い払い災害を避け、縁起の良い力をもった幸運をよぶ生き物として崇められ権威の象徴でもある龍。作品には2体の龍が前後に1体ずつ登りゆく様子と下へと降りゆく様子が描かれています。これは、守り神とされる龍が、いかなる方向からも守ってくれるという作者の願いが込められています。
本作品の見どころは、その躍動感と生きているかのような目や表情にあります。龍は目によって強くも優しくも表情が変わりますが、目に青緑に光るヤコウガイを据え、光の差しようによって表情が変化し、その自然が織りなす光の加減によって様々な表情を見せます。決して強く恐いだけの表情ではなく、その目には優しさが宿っているかのような印象を与えてくれます。
▲世界限定8点、¥5,720,000
「天地鳳凰」
愛と自愛の象徴である鳳凰。古代中国では聖天子が現れる時に姿を見せる瑞鳥」とされ吉祥文様の一つ。鳳凰は桐の木に宿るとされ、桐もまた神聖な木とされています。
ケースには、3羽の鳳凰が描かれ、カトラリーには、桐が凛とした佇まいで描かれています。
3羽の鳳凰が漆黒の深い天空を舞い、鳳凰の下にはヤコウガイが撒かれ、自然が創り出す美しい光がまるで星のよう。鳳凰の羽から零れ出る美しい光は、金を撒いて研ぎ出すことで立体的に表現されています。羽には、金、銀、パラジウムの色の陰影を使うことで、鳳凰の神々しさと上品さを表現しています。
▲世界限定8点、¥5,225,000
「宙の天馬」
紀元前1000年以上前に西アジアからギリシア・ローマ、また中国・日本へと広がった翼をつけた夢の馬「天馬」はしばしば翼をもった馬として描かれますが、箱瀬氏はあえて描かず日本古来の馬として描きました。
直径0.03ミリの金箔を撒き、0.015ミリまで研ぎ表面に浮き上がらせ、赤く光る宇宙の光を表現。ヤコウガイと金で表現された星と星とを、真っ直ぐ一息に描いた細い線で結び、漆黒の夜空に輝きと緊張感をもたらします。“漆黒の闇”とも言われるがごとく漆ならでは黒の深みが、宇宙のような空間を作り出し、その空間を3頭の天馬が自由気ままに駆け抜けます。
▲世界限定8点、¥5,225,000
問い合わせ:クリストフル 青山本店 ℡.03-3499-5031