世界的ホテリエが作った日本旅館
エイドリアン・ゼッカ。この名に聞き覚えがある方も多いのではないでしょうか。世界遺産のある土地や未開の地に唯一無二のラグジュアリーホテルを展開するアマンリゾートの創業者のひとりがエイドリアン・ゼッカです。数年前にアマンを離れ、氏の手掛ける新たな宿泊施設「Azumi Setoda」が広島県尾道市に開業しました。
©Yuna Yagi
レモンの島として知られる瀬戸内の小さな島
「Azumi Setoda」があるのは瀬戸内海に浮かぶ生口島(いくちじま)。レモンをはじめとする柑橘類の栽培で有名な島です。生口島は広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ風光明媚なサイクリングロードでもあるしまなみ海道の中間地点に位置しています。年間を通じて温暖な気候で潮風が心地よく、穏やかな海に囲まれており、「Azumi Setoda」はそんな港からほど近い場所にあります。
©Max Houtzager
モダンにリノベーションされた江戸時代のお屋敷
「Azumi Setoda」は瀬戸田の地にあった築約140年の掘内邸をリノベーションし母屋とし、客室棟部分は新築。掘内家は江戸時代の豪商で、建物だけではなく調度品も歴史的なものが数多く残されており、それらはギャラリーやダイニングで見ることができます。リノベーションを手掛けたのは京都を拠点とし、伝統的な日本建築を数多く手掛ける六角屋・三浦史朗さん。瀬戸田ならではの潮風や日差しを感じられる空間創りにこだわり、梁や柱、障子などは残しつつ、現代的な要素も取り入れることで、伝統建築がアップデイトされたようなテイストに改築されています。
「Azumi Setoda」に足を踏み入れると空間や食事から、まるで堀内家に招かれているような温かい感覚をもつことができます。旅館というものはゲストを家族のように心からおもてなしする場所でありながら、プライバシーもきちんと確保できるものであるべき、というゼッカ氏の理念が見事に実現されているのです。
©Tomohiro Sakashita、Yuna Yagi、Tomohiro Sakashita
季節を感じるミニマルな空間と優しい料理
「Azumi Setoda」は50㎡〜70㎡の計22室の客室で構成されます。客室に入ると檜の心地よい香りに包まれます。またそれぞれの部屋毎に設計された坪庭は、室内から繋がっているように設計されており、四季や時間の移り変わりを感じられる空間に。浴槽にも檜が用いられ、無駄を省いたミニマルな空間は日常の雑念から開放され、リセットを促してくれそう。©Tomohiro Sakashita
「Azumi Setoda」では、まるで堀内邸がお客様を招いた時に振舞うような、家庭料理や宴会料理のような食事を提供します。地元の旬な食材、特に魚介類や柑橘類、野菜を主に使うので、メニューは日々変化していきます。また瀬戸田は古くから海上交易の要所であったことから、アジアやペルシャを感じさせるハーブやスパイスを取り入れていることも特徴の一つ。旧堀内邸に保管されていた多くの貴重な食器も使われ、時の移ろいを感じられる食事に。おまかせのコースに加え、アラカルトも。
©Max Houtzager
ローカルと繋がることができる銭湯旅籠
旅館の向かい側には銭湯付きの旅籠「yubune」も同時に開業しました。銭湯とサウナ、湯上がりラウンジに加え14室の客室も備えています。宿泊客でなくてもビジター利用も可能。お風呂の壁にある瀬戸内の生き物や自然が描かれたタイル壁画は美術家のミヤマケイさんによるもの。男湯には昼間の瀬戸内海、女湯には夜の瀬戸内海が描かれます。季節に合わせて瀬戸田ならではのレモン風呂や塩の湯の体験もできるそう。旅に出ても、地元の人と深く触れ合うのはなかなか難しいものですが、銭湯という空間があれば、地元民と繋がることができ、ローカルな生活を垣間見ることができるのは貴重な体験になることでしょう。©Yuna Yagi
問い合わせ:
・Azumi Setoda
住所/広島県尾道市瀬戸田町瀬戸田 269
TEL/0845-23-7911(代表)
HP/azumi.co/setoda
料金/1泊1室約6万5000 円〜(税・サ別、銭湯入浴込み、朝食込み)
・yubune
住所/広島県尾道市瀬戸田町瀬戸田 269
TEL/0845-23-7911(代表)
HP/azumi.co/yubune
料金/1泊1室約2万円〜(税・サ別、銭湯入浴込み、軽い朝食込み)