北海道「Moving Inn Tokachi 北の森」
羽田空港から北海道・道東の拠点空港である帯広空港までは、わずか1時間40分のフライト。しかし帯広空港から車を走らせると、窓からの眺めはこれぞ十勝平野と言えるような畑、畑、畑が続く。ここで育てられている作物はじゃがいも、小麦、大豆、ビートなど。葉や花で見分けがつくようになると、十勝通と言えるだろう。広大な畑と青空のコントラストが目に心地よいが、さらにカラマツや白樺の防風林が景観に美しいアクセントを加えてくれる。
日本で一番新しい国立公園に、新しい旅のカタチでステイ
広大な十勝平野の北には石狩山地がそびえる
信号がほとんどない爽快なドライブも、十勝平野を抜け、日本一の清流「歴舟川」を渡り、「北海道の背骨」とも呼ばれる日高山脈に近づいてくるにつれ、景色が山や森に変わってくる。6月25日、全国で35番目となる国立公園に指定されたばかりの「日高山脈襟裳十勝国立公園」は、日高山脈からすそ野の森林地帯を経て海まで繋がる壮大なスケールを持つ、国内最大の国立公園となった。
世界に誇る大自然を擁するこのエリア内に、2023年4月28日にグランドオープンしたのが「Moving Inn Tokachi 北の森」。コンセプトは「日本屈指の大自然を舞台に、最高のロケーションで宿泊し、最高の食材を味わい、広大なフィールドを思いのままに移動するプレミアムな旅行体験を楽しんでいただく」というもの。「キャンプでもリゾートでもない新しい旅のカタチ」を提供する「Moving Inn」の魅力を深掘りしていこう。
美渓「ヌビナイ川」のせせらぎが響く森の中という贅沢なロケーション
リゾートホテルが建設できないような原生自然の奥深くというロケーションにオープンできたのは「Grand Suite移動式特別客室スタイル」&「Nature Suiteプライベートキャンプスタイル」という2つの宿泊スタイルだからこそ。2万坪の原生林の中にわずか4区画のみの宿泊というのは、その広大さを誇る北海道でもなかなか耳にしないだろう。
Grand Suite「NAGAME」と「AWASE」、和と洋で森に遊ぶ
「Grand Suite移動式特別客室スタイル」の「NAGAME」は今までにないトレーラーハウス
まず「Grand Suite移動式特別客室スタイル」、いわゆるトレーラーハウスでの宿泊をご紹介しよう。英語ではmobile homeやmotor homeと呼ばれるもの。通常<見た目はキャンピングカーを大きくしたようなタイプ><簡易な小屋や家的な外観を持つタイプ><武骨なコンテナ的外観のタイプ>の3タイプに分別される。
しかしここ「Moving Inn」のトレーラーハウス「NAGAME」(定員2名)は、それら既存のタイプには当てはまらない、スタイリッシュで独創的な和と洋のフュージョンスタイル。和のトレーラー(リビング&ダイニング)と洋のトレーラー(サウナ&東屋)が組み合わさった「NAGAME」を含むMoving Inn各施設のデザインを監修したのは「六角屋」(京都)代表の三浦 史朗氏。三浦氏は京都生まれで、早稲田大学理工学部建築学科・大学院を卒業後、数寄屋大工棟梁の中村外二氏に師事した経歴を持つ数寄屋建築専門の建築家だ。
十勝の森の中、和のトレーラーハウスで過ごすというと、イメージ的にはギャップを感じるかもしれないが、そもそも日本の建築は自然と溶け合い一体となるようにできているもの。この「NAGAME」は3面がガラス張りで、窓は開け放つこともできる。外の森と室内が繋がり、調和し、見事に一体となる。屋上は、開放されたデッキスペースに露天風呂が置かれる。この「リビング」トレーラーを中心に、「ダイニングトレーラー」「サウナ」「東屋」があり、そのいずれからもヌビナイ川の美しい眺めを楽しむことができる。
「NAGAME」では周囲の森や清流ヌビナイ川の眺めを楽しむことができる
窓を開け放して縁側で寛ぐなど、様々なアレンジができるのも和室ならでは
へぎ板の網代天井や和モダンな照明などの上質な設えが心地よい
「ダイニングトレーラー」。炭火でグリルする十勝の旬の食材を味わうことができる
屋上は風呂付きのデッキスペース。地上3mの高さから清流を眺めながらの入浴はまた格別
もう1棟のトレーラーハウス「AWASE」(定員4名)は北欧風。ナチュラルで温かみがありながらも洗練されたシンプルなデザインは、十勝の風土にも、周囲の森ともよく調和している。深緑色のロッジが森の中に佇む様は、ここがノルウェーの森かと見紛うほど。「AWASE」は大人4名までが快適に寝泊まりできるトレーラーハウスを中心に、テーブルセットが置かれ、薪や炭で調理ができる「アウトドアキッチン」、窓から森を見ながら汗を流せる「サウナ」(水風呂は檜風呂)、焚火ができる広い「デッキ」(オプションのプロジェクターを使い、アウトドアシアターとしても楽しむことができる)、薪をくべて入る「露天風呂」(夜には頭上に星が瞬く)といった設備がデッキを介して繋げられており、快適さはこの上ない。
宿泊用メイントレーラーを中心にアウトドアキッチン、サウナ、露天風呂がデッキで繋がる
森の中で暮らしているような非日常感が味わえるメイントレーラー
Nature Suite「KODACHI」と「HOTORI」でさらに間近に自然を感じる
テント泊の魅力はやはり非日常性。不便さがまた楽しくもある
ここ「Moving Inn Tokachi 北の森」では「Nature Suiteプライベートキャンプスタイル」という過ごし方を選ぶこともできる。「KODACHI」は敷地内の高い位置にあり、「HOTORI」は小川の畔にある。どちらも昼間は小鳥たちが美しい歌声を聴かせてくれ、夜には木々の額縁の中、満天の星空を眺めながらの露天風呂が心癒してくれる。専用のサウナや露天風呂があるのは「NAGAME」や「AWASE」と同様だが、大きな違いはテントまたはキャンピングカーを寝室として利用すること。だが、たとえテント泊に慣れていなくても心配はいらない。なぜなら、スタッフがテントの設営から撤収までを代行してくれるから。テント泊の楽しみのところだけを楽しめばいいという訳だ。外界との隔たりは薄い布一枚だけというテントで過ごす夜は、また格別なもの。せせらぎや木々のざわめき、森の香り、風の音などを肌で感じることができる。もし何日か滞在できるのであれば、例えば初日はテントで過ごし、以降はトレーラーハウスで、というような過ごし方もあるだろう。ちなみにこの森には、北海道を代表する可愛らしい動物「シマエナガ」や「エゾモモンガ」もいるらしい。気配を感じ、そっと耳をすませてみて欲しい。
壁に掛かったヴィヒタはスタッフの手作り
薪式オーブンと囲炉裏のあるアウトドアダイニング
人気が高まっているキャンピングカーでの宿泊をぜひ体験してみていただきたい
星座や流れ星を探しながらの露天風呂は、きっと忘れられない体験となる
十勝の豊穣な恵みを食す
「旬の食材コース」は、十勝の野菜、肉、魚介類をベースに薪や炭を使って調理。自身で調理するセルフコースと、サービススタッフに調理サポートをしてもらうセミセルフコースのどちらかを選ぶ
Moving Innが提供する食事は、北海道出身の森枝 幹氏が監修したもの。世界にその名を知られる名店「Tetsuya’s」(シドニー)、京料理の老舗割烹「湖月」(表参道)、マンダリンオリエンタルホテル内の分子調理レストラン「タパス モラキュラーバー」(日本橋)にて修行を重ね、2014年より飲食店舗のプロデュースやメディアの活動も行う。2019年には、渋谷パルコにタイ料理レストラン「CHOMPOO」をオープンさせた異色の経歴を持つシェフである。
「2種のステーキ食べ比べ」コースでは、大樹町で育った牛の力強い旨さが堪能できる
そんな森枝氏が監修するメニューは、十勝の食材を中心とした新鮮な海の幸と山の幸を薪や炭で調理するもの。「旬の食材コース」は、春夏の収穫物を発酵させた前菜盛り合わせから始まり、十勝産の新鮮野菜や魚介、お肉を囲炉裏で炙りながら味わうコースメニュー。「2種のステーキ食べ比べ」コースは、地元大樹町の坂根牧場で育てられた牛を様々な部位で楽しめる。せっかくなので、年々評価が高まっている北海道産のワインとペアリングしていただきたい。
移動するホテル
車内とは思えない快適な空間と寝心地が好きな場所で愉しめる
もうひとつ、Moving Innの提供するユニークな宿泊スタイルがある。「キャンピングカー」を中心とした車中泊ができる車のレンタカーだ。「Moving:移動する」「Inn:ホテル」の名の通り、キャンピングカーはまさに「移動するホテル」。敷地の外に出て、好きな景色の好きな場所を、自分だけの宿泊スポットにすることができるのだ。キャンプギアなどは車に装備されているので、車を借りたらあとは楽しむだけ。なお車種は、HIACEやLAND CRUISERなどのラインナップから選ぶことができる ので、旅の目的地や遊び方、人数などに合わせて選んでいただきたい。
オフロードも楽しむのであれば、やはりLAND CRUISERを選びたくなる
十勝の広大さは、北海道の中でもまた格別。しかも、太古の森が広がる一方で、大樹町には「北海道に、宇宙版シリコンバレーをつくる」というアジア初の民間に開かれた商業宇宙港「北海道スペースポート(HOSPO)」があるというコントラストが興味深い。
おすすめの“絶景”停泊地はスタッフに聞くこともできる
十勝を代表するパワースポット「帯廣神社」は「花手水」や「シマエナガみくじ」などでも知られる
Moving Innの施設から車を走らせれば、世界的にも珍しいヨード温泉「晩成温泉」や十勝川モール温泉があり、北海道を代表する菓子店が運営する「六花亭アートヴィレッジ 中札内美術村」も近い。ほかにも「ばんえい十勝 帯広競馬場」「真鍋庭園」「池田ワイン城」、スピリチュアルなスポットとしてだけでなくシマエナガのおみくじや花手水なども話題の「帯廣神社」など、魅力的なデスティネーションが目白押しだ。ドライブの途中に立ち寄りたいグルメスポットも、無数にある。キャンピングカーを駆って、十勝の休日を自由に満喫するという選択肢は検討に値するだろう。
ひと口に北海道と言っても、エリアによってその姿は様々。中でも十勝を含む道東エリアには無辺際の大地と海、雄大かつ神々しい山々、驚くほど透明な川の流れがあり、北海道と聞いて思い描くイメージそのものに出合うことができる。
日常の喧騒から離れ、本物の大自然に抱かれるウェルネス旅を計画するならば、アクセスも便利、さらに世界に誇るナショナルパークとして今、最も注目を集める北海道・十勝を第一候補としてみてはいかがだろうか。Moving Innの持つもうひとつの意味「感動的」な休日を、きっと過ごすことができるはず。