東京ストラディヴァリウスフェスティバル2018開幕。

©1002MCH

演奏家や楽曲を主役にするのではなく、“楽器”としての面白さを紐解くというユニークなイベントが
「東京ストラディヴァリウス フェスティバル 2018」だ。
世界で最も知名度のある“ストラディヴァリウス”に注目し、7月1日のコンサートを皮切りに、
さまざまな角度から、人々を魅了し続けるヴァイオリンの魅力を体感できるフェスティバルで、世界初の試み。
演奏だけでなく、体験型のエキシビションが行われるのも興味深い。

 

Photographs©Jan Röhrmann

Photographs©Jan Röhrmann

“ストラディヴァリウス”は高価なヴァイオリンということは知っていても、
詳しくご存じという人は、少ないのではないだろうか。
“ストラディヴァリウス”とは、アントニオ・ストラディヴァリ氏によって作られた弦楽器で、
17世紀から18世紀に制作されたにもかかわらず、約300年を経た現在においても生きた楽器であり、
アートでもあるという希少な存在だ。
ヴァイオリンで現存している数は約500挺。
1挺数億円と高価でもあるため、個人所有より財団などが所有し、
有望な演奏家に貸与し、後世へと引き継がれていくように管理されている。
ヴァイオリンが特に有名だが、実は、ヴィオラやチェロ、ギターまでも制作されている。
このフェスティバルの後半では、
ヴィオラ、ギターを含む20挺ものヴァイオリンが東京に集結し、展覧会が開催される。
推定総額200億円という規模は、アジア歴史上初なのだそう。
ちなみにギターは、世界で5挺しか現存していないそうで、かなり貴重な機会になりそうだ。

 

Photographs©Jan Röhrmann

今回のフェスティバルは、コンサート・展覧会・サテライトイベントの3部構成で開催されている。
オープニングを飾ったのは、
「ストラディヴァリウス ソロイスツ コンサート~三浦文彰・宮田大 with 東京藝術大学・英国王立音楽院 日英名門音楽大学ジョイントオーケストラ~」だ。

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ヴァイオリンの三浦氏も、チェロの宮田氏も、
若くして世界的なコンクールでの優勝経験のある日本を代表する演奏家。
その二人の共演が楽しめるだけでもまれなのに、
どちらの楽器も、“ストラディヴァリウス”であるということも興味深く、
聴きごたえのあるコンサートだった。
貴婦人のような美しくエレガントであり、凛とした音色に、
二人の演奏の力強さがプラスされ、魅了されっぱなしの時間を過ごせた。

 

コンサートの後、楽屋を訪ねてみると、
演奏の時の凛々しい表情とは違い、柔和なお二人の笑顔があった。
なかでも一番ほっとしているように感じられたのが、
今回のフェスティバルの代表キュレーターである中澤創太氏だ。
フェスティバル初日のコンサートを終えての気持ちを伺うと、
「企画から5年がかりで、やっとですから」と笑顔がこぼれた。
「他にはないコラボができましたし、その両方がストラディヴァリウスということも珍しいと思います。
いつもとは違うお客様もたくさん来てくださっていたのもうれしいですね。
また、日本と英国の両大学のご協力あってこそ実現しました。
でも、まだ始まったばかりで、これから半年続くので、多くの人にぜひ楽しんでもらいたいです。」
次回のコンサートは、8月17日。
ヴァイオリンの哀愁漂う旋律が印象的なP.サラサーテのツィゴイネルワイゼンなど、
クラシックファンでなくとも、どこかで聞き覚えのある曲が演奏されるので、
こちらもいつものファン以外の人も大いに楽しめそうだ。

 

コンサートプログラムのほか、サテライトイベントでは、次世代を担うヴァイオリン作家が来日し、
実際にヴァイオリンを作り上げる光景が見られたり、
サウンドデータからの体験型イベントが行われたりと盛りだくさんのプログラムだ。
もちろん、10月に開催される21挺もの“ストラディヴァリウス”が集結する展覧会も見逃せない。
よほどのクラシックマニアでなければ体感することがないであろう希少なイベントが行われるので、
この機会に、300年経った今も王者であり続ける“ストラディヴァリウス”の魅力に触れてみるのもいいかもしれない。

林ゆり●文

 

東京ストラディヴァリウスフェスティバル2018
http://tsf2018.com/

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