リシャール・ミルと海洋スポーツの意外なコネクション

新作の最新情報

6月25日(金)日本時間の深夜、リシャール・ミル セントバーツ・ヨットレースのパートナシップから誕生した世界限定モデル「RM 60-01 オートマティック フライバッククロノグラフ セントバーツ」が発表されました。今回の新作紹介は、本格時計専門WEBマガジン「Gressive」編集長である名畑 政治氏と、リシャール・ミルのアフターサービスを担当する本社公認の時計技術者、竹中茂喜さんに新作モデルを解析していただきました。
リシャール・ミルというと、どうしてもモータースポーツへの傾倒ぶりに思い至る。実際、フランス・レンヌの自邸には往年のレーシングマシン・コレクションがずらりと並び、リシャール氏が“ファミリー”と呼ぶ、最初のブランド・アンバサダーはF1ドライバーのフェリペ・マッサであった。

しかし、リシャール・ミルの最初のコレクションが発売された2001年から、わずか5年後の2006年には、早くも海洋スポーツに向けた最初のモデルが発表されている。それが「RM 014 トゥールビヨン ペリーニ・ナヴィ・カップ」である。このモデルは“世界最高峰のヨット”と呼ばれるイタリアのラグジュアリーな帆船メーカー「ペリーニ・ナヴィ」とのパートナーシップによって誕生したモデルであり、モータースポーツと同様、海洋スポーツの華であるセーリングの分野においても、リシャール・ミルの傾倒ぶりを伺うことができる。
▲「RM 014 トゥールビヨン ペリーニ・ナヴィ・カップ」

カリブ海が舞台の過酷でラグジュアリーなヨットレース

そのリシャール・ミルから2021年の新作として6月23日に発表されたのが、「RM 60-01 オートマティック フライバッククロノグラフ セントバーツ」である。ここで我々日本人にとっては、あまり耳慣れない“セントバーツ”について少々、説明しておこう。セントバーツ(St. Barts)とは英語読みの地名で、フランス語では「サン・バルテルミー(Saint Barthélemy)」と呼ばれる、カリブ海に浮かぶフランス領の島。1493年にコロンブスにより発見された後、紆余曲折を経てフランス領となり、現在ではフランスはもちろん、ヨーロッパやアメリカの富裕層にとって格好のリゾート地となっている。

このセントバーツを舞台に開催されるのが、「セントバーツ・ヨットレース」であり、リシャール・ミルでは最初に開催された2010年からサポートを開始。やがて、このレースは毎年平均80ものチームが世界各地から集まり、7つのカテゴリーに分かれて競い合うカリブ海で開催される代表的なヨットレースに昇格。これを受けて2019年、リシャール・ミルはこのレースのタイトルスポンサーに名乗りを上げ、「リシャール・ミル セントバーツ・ヨットレース」と改名されたのである。
リシャール・ミルでは、まず2010年に「RM 028 セントバーツ・ヨットレース」を100本限定で発売。2014年にレガッタのセーリングや競技に特化してデザインされた「RM 60-01 フライバッククロノグラフ レガッタ」を発表。2015年と2017年には、各50本のセントバーツ リミテッドエディションとして「RM 60-01 フライバッククロノグラフ レガッタ」も発表した。

▲2010年発表「RM 028 セントバーツ・ヨットレース」

▲2014年発表「RM 60-01 フライバッククロノグラフ レガッタ」

▲2015年発表「RM 60-01 フライバッククロノグラフ レガッタ」
▲2017年発表「RM 60-01 フライバッククロノグラフ レガッタ」

そして2021年、これらのモデルの集大成として新作「RM 60-01 オートマティック フライバック クロノグラフ セントバーツ」が登場。このモデルは、あらゆる点で過酷なヨットレースを勝ち抜くための機能が詰め込まれた世界で唯一のタイムピースとなっている。

レースは中止。だが支援の継続をリシャール・ミルは決意した

だが、実は今年(2021年)、セントバーツのレースは中止となってしまった。2020年4月に状況が一時的に改善したため、2021年度のレース開催に希望の火が灯ったが、その後に導入された入島時の隔離義務と不要不急の往来禁止の措置によって、このレースのような国際的イベントの開催が不可能となり、「リシャール・ミル セントバーツ・ヨットレース」も中止が決定したのである。しかしリシャール・ミルは、これまで毎年、レース優勝者にリシャール・ミルのタイムピースを1本進呈してきたことから、たとえレースが開催されないとしても、変わらぬ支援の精神を表明するために、この新作を発表。そして、モデル1本の販売利益の全額を、セントバーツの地域復興のために寄付すると決断したのである。

ヨットレースに特化した先進機能の数々

では、この新作の機能を解明していこう。ケースのスタイルはリシャール・ミルのアイコンとも言えるトノー型ではなく、防水性の点でより有利なラウンド型を採用し100m防水を実現。このケースに搭載されるのはリシャール・ミルが自社で開発した自動巻きムーブメント「キャリバー RMAC2」である。この最先端のムーブメントには1度のボタン操作で瞬時に計時を再開できるフライバック クロノグラフを搭載。ダイアルの中央にはセコンドカウンター、9時位置には60分のカウントダウンタイマー、6時位置に24時間の積算計を装備し、長時間に渡る経過時刻の計測が可能となっている。さらに12時位置には大型日付表示のオーバーサイズデイトを、4時と5時の間には月表示を備えているが、これらのカレンダー表示は1年に1度の修正だけで自動的に30日か31日かを判断して表示するアニュアルカレンダー(年次カレンダー)であるから、その利便性は非常に高い。

さらにもうひとつ、このモデルの特筆すべき機能に、北半球・南半球のどこにいても簡単に時刻と方位を知ることのできるUTC(協定世界時)針を備えていることがある。このUTC針を太陽の方向に設定することで、カーボンTPT®製の回転ベゼルを操作すれば、ベゼル上にローカル時刻が表示され、この時、東西南北を示す方位計が自動的に連動し、方位がわかるというわけだ。

軽量かつ強靭な素材を用いた独自の4層構造ケース

ヨットレースに特化した究極とも言うべき機能を装備する「RM 60-01 オートマティック フライバック クロノグラフ セントバーツ」のケースは、独自の4層構造となっている。ミドルケースは炭素繊維の方向を変えて積層してレジンを浸透させ、高温高圧で加工した軽量にして強靭な新素材カーボンTPT®を用いている。このカーボンTPT®をチタン製のトップとバックでサンドイッチし、トップにはミドルケースと同じカーボンTPT®製のベゼルを重ねることで4層構造を実現しているのだ。

さらに、カーボンTPT®製ベゼルの内側にセットされたインナーベゼルは海洋とヨット競技を象徴する美しいターコイズブルーを採用。サファイアクリスタルのケースバックには「LES VOiLES DE ST.BARTH FRENCH WEST INDiES REGATTA(リシャール・ミル セントバーツ・ヨットレース)」という大会のロゴが鮮やかに印字されている。

つまり新作「RM 60-01 オートマティック フライバック クロノグラフ セントバーツ」は、世界80本限定という極めて希少なタイムピースであると同時に、リシャール・ミルの海洋スポーツへの強固な意思を表面する極めてシンボリックなモデルなのである。

文・名畑政治(なばた まさはる)氏
時計ジャーナリスト、本格時計専門WEBマガジン「Gressive」編集長。85年からフリーライターとしての活動をスタート。スイスのジュネーブやバーゼルで開催されるフェアへは94年から毎年取材を行う。また時計だけでなく、カメラ、アイウェア、ミリタリーアイテムなどにも精通し、時計専門誌や男性誌など様々な媒体へ執筆、幅広い分野で活躍されている。

リシャール・ミル アフターサービス 時計技術者がみるココに注目!

「RM 60-01 オートマティック フライバッククロノグラフ セントバーツ」で私が注目したポイントは3つです。
まずは、リューズです。ロッキングリューズといってリューズの内側にあるリング(赤い▲がついている部分)を回すだけでリュウズと2時と4時位置両方のクロノグラフのプッシャーを同時にロックすることができます。これはリシャール・ミル独自のシステムです。
2つ目はムーブメントの構造。フライバッククロノグラフのムーブメントを丸型に設計しなおしたキャリバーを搭載しています。
3つ目が最も注目したポイントです。それはUTC針と回転ベゼル利用して方位確認できることです。磁石のついたコンパス機能がないにもかかわらず、方位がついたカーボンTPT®製の回転ベゼルを回すことで、方位の確認が可能なのです。使い方はとても簡単。まずUTC針(赤い針)を太陽の方向に向けます。南半球(Hemisphere SUD)にいるのであれば白の時刻表示、北半球(Hemisphere NORD)であれば青の時刻表示を用い、回転ベゼルを回してUTC針(赤い針)先にいまの時刻を合わせるだけです。
そしてここに1つ、細かな配慮があります!時間を合わせやすいように内側に太陽が出ているであろう時間(6時~18時)が表示されています。機能はもちろんですが、細かなデザインも非常に優れているモデルだと思います。

文・竹中茂喜(たけなか・しげき)
時計修理技能士1級を持つリシャールミルジャパン テクニカルマイスター。年に数回スイス、レ・ブルルーにある工房でトレーニングを受けリシャール・ミルを熟知するひとり。

「RM 60-01 オートマティック フライバッククロノグラフ セントバーツ」

自動巻き(自社開発キャリバーRMAC2)、カーボンTPT®×チタンケース、ケースサイズ:径50.00×厚さ16.33mm、ラバーストラップ、100m防水、25,850,0000円(税込予価)、世界限定80本。

問い合わせ先:リシャールミルジャパン
TEL.03-5511-1555
https://www.richardmille.com/ja