メルセデス・ベンツ「EQC Edition 1886」日本限定55台!

エンジンスターターを駆動補助用モーターとしても活用する48Vマイルドハイブリッドから燃料電池利用のEVに至るまで、メルセデスは手掛ける市販車パワートレーンの電動化を総称するサブブランド的なキーワードとして「EQ」を用いている。
その意は、エレクトリック・インテリジェンスを指すシンプルな造語といったとろだ。
そのEQ銘柄において中核に位置するのが、メルセデスにとっては初の本格的量産EV車両となるこのEQCシリーズだ。

シャシーのアーキテクチャーには現行GLCクラスのそれを用いつつ、特に電池を収めるフロア回りは徹底的に手を加えられるなど、そのエンジニアには幾つもの独自性がみてとれる。
まずは先ごろ日本でも発表された、そのスペックを追ってみよう。
搭載バッテリーは総数で384のセルを6つのパッケージに括り全てを床下に配置。
その重量は635kgにもなるという。80kWhという電力量はこの車格のEVとしては標準的なもので、その航続距離は実使用に最も近いといわれる最新のWLTCモード計測値で400km。
充電は家庭用の200Vや高速道路網を中心に普及するCHAdeMOのような急速充電にも対応している。
日本においては登録時から1年間、全国約2万1000基の充電スポットの利用料を無料とし、家庭用の200V充電器の提供と設置費用を10万円相当までサポート、
更には登録から8年もしくは16万km走行時のいずれかで走行用バッテリーの容量が70%以下まで劣化した場合、修理交換等を保証する。

インポーターもEVにまつわる不安や負担を可能な限り払拭しようというわけだ。
駆動用のモーターは前後に搭載され総合出力は300kW=408ps相当、最大トルクは765Nmとなる。
正式名称のEQC400 4マチックは従来からのネーミングに則り、4l相当の動力性能を保持する四駆であることを示しているが、ことトルクに関していえば同じメルセデスの銘柄で探せばAMGの63シリーズが積む4lツインターボのそれをも上回っている。
その割には0〜100km/h加速は5.1秒と控えめに映るかもしれないが、これは猛烈にトルクリッチなEVの特性を安直に誇示するのではなく、むしろ万人に向けて丁寧に躾けたものと理解した方がいい。
ちなみに最高速は変速機を持たない関係で180km/hに収まる。
EQCの車寸は4761×1884×1623mm。ベースであるGLCクラスより全長が100mm近く長いだけで、他は大差ない。
床下に敷き詰められたバッテリーによる、運転姿勢や居住性への影響は最小限に留められている。
というか、大半の人はそこに特別なクルマであることの我慢や違和感を抱くことはないはずだ。
ちなみに荷室容量は500lが確保されており、ファミリーカーとしての資質に何の問題もない。

EQCの場合、内外装のデザインや設えという点がユーザーの望むところかといえば、賛否は分かれるかもしれない。端々に新しい化粧は施すものの、微妙に従来からのメルセデス感も織り込まれている。要はこれを吹っ切れなかったとみる向きもあれば、安心感を提供しているとみる向きもあるだろうということだ。
ちなみに各種操作は完全に従来のメルセデス流が踏襲されているから、それに慣れ親しんだユーザーにとっては乗り換えのハードルはまったく高くない。
先んじてノルウェーでこのEQCに乗る機会があったが、このユーザービリティの高さは走りにおいても然りだと思った。
意図してアクセルを底踏みすればドーンと全身をシートに沈めるGと共に内燃機ものとは質の異なるドスの効いた加速をみせてくれるが、ペダルをしずしずと扱っている限り、その応答は至って紳士的で洗練されている。
EQCには走行距離を最大限に引き出すためのテクニックをサポートしてくれるモードがドライブセレクターに収められているが、それを用いればアクセルの操作自体に制限速度域を保持するよう擬似的なクリック感が設けられるなど、エコドライブをクルマの側が促してくれる。
また、EQCにはメルセデスの最新世代の安全運転支援システムやAIコンシェルジュシステムも搭載されているから、充電プランを相談しながらのロングドライブも新しい経験となるかもしれない。

もちろんドライブをクルマとの対話に費やしたい向きにとっても、EQCは魅力的なパフォーマンスを示してくれる。
盤石の安心感を土台とした持ち前のハンドリングにはEVならではの重心の低さが加わり、ドーンと路面に根を張ったコーナリングをみせてくれるし、ブレーキの制動力や姿勢においても2.5tに近い重量をまったく苦にしていない。
駆動源の音が圧倒的に静かなことから遮音には相当気遣ったようで、風切音やロードノイズなどの遮断感はEクラスをも上回る大物感を漂わせる。
動的な特性は本当に洗練されているが、それでも充分に新しく刺激的だ。
これこそがEVのEVたるところだろう。
EQCを持つにあたって一番の悩みどころとなるのは充電時間ではないだろうか。メルセデスが充電器本体と10万円の開設費用をサポートするという家庭用の200V電源で、空〜満充電まで約13時間。そしてCHAdeMOのような急速充電器でも同様の工程には約80分を要するという。前述の400kmの走行距離のための、この余剰時間をいかにポジティブに消化できるか否か。本格的な納車開始は今年10月以降となるから、まだ悩むための猶予はありそうだ。
が、もしできるだけ鮮度の高いうちに乗りたいということであれば、検討の時間は限られてくる。
初回限定的なスペシャルパッケージが7月18日より注文受付をスタートするからだ。
その名はエディション1886。つまりゴッドリープ・ダイムラーとカール・ベンツが内燃機自動車を発明した年をグレード名にしたというわけだ。ちなみに日本での限定数は55台となっている。

渡辺 敏史・文

メルセデス・ベンツ
https://www.mercedes-eq.jp/

※画像はすべて欧州仕様

関連記事

  1. マクラーレン720Sは、2駆で0-100km/h 2.9秒!

  2. ベントレー、90年前の名車を12台限定復刻!

  3. ベントレーの新作「Bacalar」が3月3日に一般公開

  4. ファントムとドーン 2台の特別なビスポークのロールス・ロイスが完成

  5. 限定399台のマクラーレンのロードスター。

  6. 最新コンセプトのショールーム、「ロールス・ロイス・モーター・カーズ横浜」がオープン

  7. フェラーリ、その世界一のサービスが日本にある

  8. 世界一級のスーパースポーツしか辿り着けない領域。7分29秒90。

  9. フェラーリの純粋な内燃機関で構成された最後のV8ミッドシップ。

人気記事 PICK UP!

HOT TOPICS

おすすめ記事

  1. 「バング&オルフセン」の Beovision Harmonyに待望の8…
  2. うまさを追求した最高峰の日本酒鷹ノ目-ホークアイ
  3. 伊勢丹新宿店本館5階=ウォッチにカフェが誕生。
  4. 「ブルーノ・マーズ」がプロデュースするラム酒「セルバレイ」 が日本上陸!
  5. ラリックの香水『クリスタルボトル コレクション2020 《オーキデ》』が発売。
  6. フランチェスコ・マッツィ イタリア・アッシジにて特別展「SHINE ON JAP…
  7. 「ベルルッティ」のホーム&オフィス オブジェ コレクション
  8. 「THE HIRAMATSU 京都」が開業
  9. 最高峰の日本酒ブランドSAKE HUNDREDが、現代日本画家 大竹寛子氏とのコ…
  10. 隈研吾が手掛けた一組限定温泉宿「草津きむらや」が開業
PAGE TOP