AMG GT4ドアクーペは、サーキットスピードを前提にした真のスポーツクーペ。

現在、メルセデスAMGのビジネススケールは、

ラインナップの増加とともに急拡大しており、

昨年は43シリーズの投入に伴い、対前年比約3割増の13万台余をマークしている。

すなわちメルセデスの乗用車販売の20台に1台以上がAMGと言い換えれば、その規模は窺えるだろう。

一方で、その数が増えれば増えるほど、

ブランド価値の希釈化という課題がクローズアップされるのもものの道理だ。

そしてメルセデスAMGは、自らの存在理由をより明確に強化することで

数的論理を圧しようとしているようにもみてとれる。

その最たるところといえば、圧倒的な強さを誇るF1のテクノロジーを限りなく

リアルにフィードバックしたロードゴーイングレーサーともいえる「ワン」の存在だろう。

限定275台、価格は3億円とも目されるそれは開発最終段階の現時点で既に完売。

日本からも幾人かがリストに名を連ねているという噂がある。

ちなみに先日メルセデスAMGのトビアス・メアース社長に話を聞く機会を得たが、

このようなリミテッドモデルを今後もリリースし続けるかはわからず、

なくともワンの納車が完了するまでに新しいプロジェクトが動き出すことはないとのことだった。

このワンほどではないにせよ、継続的に販売されるモデルラインナップにおいて、

メルセデスAMGのスポーツイメージを最も際立てる存在となるのがAMG GTシリーズだ。

そのラインナップは世界一線級のスポーツカーたちと対峙するGTRや、

2シーターオープンのGTCロードスターのみならず、

国際格式レースの参戦を希望するジェントルマンズ・ドライバーのために

レース専用車両及びサービスパッケージの供給と、実に多岐に及んでいる。

 

そのAMG GTに新たに追加されるのがこの4ドアクーペである。

Sクラス級の全長や全幅をみるに、

メルセデスに詳しい向きはCLSクラスとの棲み分けを伺うことになるかもしれない。

それについてはトビアス・メアース社長の言葉を借りるなら、

AMG GT 4ドアクーペ(以下GT4ドア)は、

サーキットスピードを前提にダイナミクスを構築した真のスポーツクーペであり、

最も明快なライバルであるポルシェ・パナメーラを上回る存在……というわけである。

GT4ドアに用意されるグレードは搭載されるエンジンによって区分され、

43・53・63系の3本立てとなる。

うち43と53は最新世代の直6直噴ターボに48VのISGを組み合わせたマイルドハイブリッド、

そして最もスポーティな仕様となる63Sは639hpを発揮する4l直噴V8ツインターボを搭載、

後輪駆動的な挙動も実現するインテリジェントな四駆との組み合わせで

0〜100km/h加速で3.2秒、最高速は315km/hをマークする。

単純な数字比較であれば、これはポルシェ911GT3や、

ンダNSXといった一線級のスポーツカーとも対峙するものだ。

 

内装はAMG GTのデザインエッセンスを踏んでおり、

大きなセンターコンソールの両サイドに機能系のコントロールスイッチが並べられる。

後席は4シーターと5シーターの2パターンが用意され、

5シーターはシートバックを倒してのトランクスルーが可能だ。

一方で4シーターはバルクヘッド部がカーボンパネルで剛結されており、

リア周りの捻じれを効果的に抑えている。

 

加えてリアサスの取付部を中心にガセットやブレースを徹底的に張り巡らせるなど、

ハッチバックボディでありながら剛性にまつわるネガはきっちり封じ込められている。

後席の居住性は頭上空間にわずかな窮屈さを覚えるが前後方向にはゆとりがあり、

荷室は開口面積も形状もプレーンで使い勝手は悪くない。

GT4ドアのストリートでの走りは、その過激なスペックから想像するほどにハードコアなものではない。

というか、むしろ拍子抜けするほどに快適と言っても差し支えないだろう。

サーキットスピードも想定するという割にはバネやスタビライザーの跳ね返りの強さも感じさせず、

路面の大きなうねりにもタイヤを伸び伸びとストロークさせながらボディをフラットに保つ乗り心地は、

メルセデスの血筋をしっかり感じさせてくれる。

キャビン回りの風切音はもちろん、路面回りからの遮音もしっかり施されるなど

その静粛性もサルーンとして充分に通用するものだった。

 

それでもGT4ドアの本懐はサーキットにあるのかもしれない……と思わせられたのは、

その限界領域があまりに高いところにあるからだ。

その身の振る舞いはエアサスを用いた2tクラスのクルマとは思えないほど軽やかかつ正確で、

リアルなスポーツカーと比べてもまったく遜色ないほどの旋回Gを発しながらのコーナリングでも

ボディが音を上げる、或いはタイヤの接地面が大きく変化する兆候は伺えない。

600psオーバーのパワーオンでも発散することなくグイグイと曲がりを深めていくサマに、

その体がセダンとは誰も思わないだろう。

快適性と運動性のいずれもが望外というか規格外

ともあれGT4ドアの存在意義は、外野に有無をも言わせない明確なものである。

渡辺敏史●文

 

メルセデス・ベンツ日本

https://www.mercedes-benz.co.jp/

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