新しいゲレンデヴァーゲンに乗った!


そもそもがNATO軍向けの高機動車として開発され、その民生版としてGクラスが発売されたのは79年のこと。
以来、搭載エンジンの変更や内外装のアップデートなど細かなブラッシュアップはあれど、約40年もの間、
完全なる刷新を受けることはなかった。
が、近年はCO2排出量の継続的削減に加え、
歩行者保護など新たな規格を盛り込んだ衝突安全基準の複雑化などもあって、
Gクラスもさすがにフルモデルチェンジを迫られていたのは確かだ。
一方でこのクルマは、変わることを望まない支持に支えられてもいた。
ちなみに2017年の世界販売台数は2万台に近く、2010年と比べると4倍強の数字だ。
この説明のしようがない売れ方こそがそれを物語っているといえるだろう。

 


結果的に新型Gクラスは、なるべく変化を感じさせず、
きっちり進化を感じさせるという相当センシティブなモデルチェンジを受けることとなった。
一見するとそのエクステリアはグリルなどの付加物を除けば、先代をキャリーオーバーしているようにみえる。
が、実際は先代との共通部品はドアノブやスペアタイヤカバーなど数点しかない。
瓜二つにみえるボディシェルはドアパネルをはじめ大半がアルミ化され、
実に170kgという先代からの減量に大きく貢献している。
一見平板にみえるガラスエリアもリアゲート以外の全てに僅かな曲げが加えられているのは、
ほんのりと新しさを醸した意匠を表現する上で欠かせないものだったからだ。
そして車内から車幅感を把握するのに便利なだけでなく、
アイコニックなアクセントでもあるフロントウインカーは、
高負荷接触時に下方に落下するマウントを新たに開発し、
万一の際の歩行者への加害性を最小限にとどめている。
この辺りのエピソードからは、変わってしまったと思わせないための執念が伝わってくる。
欧州仕様のサイズは全長が先代比で53mm長い4715mm、
全幅は121mm広い1881mm、そして全高は通常グレードで1969mmとほぼ同じ数値となっている。
先代と決定的に異なる全幅は、主に街でこのクルマを使う向きにとっては気になるところだろう。
四隅が手に取るように伝わってくる運転環境は判を捺したようにそのまま、
更にカメラ類での視界サポートも充実しており、
取り回しが難しくなったということはないが、物理的な幅感は確実に増していることは確かだ。

 


一方でナローボディなりに左右席間がタイトだった先代に対すれば、
後席含め全方位で室内空間が広くなったことやカップホルダーを含む小物入れが充実したことは歓迎されるに違いない。

 


荷室は幅が広くなるもタイヤハウスが張り出した形状は相変わらずで、
ゴルフバックなどの長物が積みにくいのは相変わらずだ。
が、これは悪路走破性最優先というGクラスのアイデンティティを鑑みて甘受すべきだろう。
同様に車体によじ登るような乗降性もそのままなのは、
Gクラスが悪路性能のためにできるだけロードクリアランスを稼いでおきたいからだ。
数多のプレミアムSUVはこの二律背反を車高調整機能を持つエアサス等で解決するのだが、
Gクラスは極限での堅牢さを優先して敢えてコイルバネをサスに用いている。
新型でもそれは変わらず……どころか、完全に刷新されたフレームやサスペンション、
ドライブトレーンのレイアウトによって最低地上高を先代より高めているほどで、
シティユースのユーザーが増えようとも核心は絶対に妥協しないという姿勢がみてとれる。

 


そこまで拘る悪路走破性について、大半のGクラスは一生経験しないかもしれない、
端的に言えば車体に傷がつくことも厭わないほどの難所で新型Gクラスを試乗することが出来た。
結論をいえばその悪路性能は現在流通するヘビーデューティモデルの中でも間違いなく一線級にいる。
そのうえで単に走り切るというだけではなく、屈強な体躯がミシリともいわず入力を受け止めるその護られ感や、
凹凸の乗り越えなどでも乗員の負担を和らげる乗り心地といった点に、このクルマの個性がみてとれる。
ちなみにGクラスの象徴的な装備である3つのデフロックは新型でも継承されているが、
その作動をオートにしなかった理由をエンジニアに尋ねるときっぱりと
「Gはマニュアル操作を愉しむクルマだから」と答えるところが頼もしい。
かつて音楽を聴くために盤に針を落としたような作法を、敢えて残してあるというわけだ。
とはいえ、そうそう悠長なことばかり言ってはいられないのも確かなわけで、
新型Gクラスは進化した先進運転支援技術もてんこ盛りなら、
他のモデルと差異なく快適に乗っていられるクルマへと変貌を遂げている。
先代に乗られたことのある方ならおわかりだろう、曲がり角ひとつでもステアリングを大きく回し、
逐一戻してあげなければならないという特有の癖は、操舵形式やフロントサス形式の変更もあってほぼ解消された。
そして軽量化の効果もあって、アクセルやブレーキのペダル操作に対するレスポンスも
他車からの乗り換えでも違和感を抱かないほどリニアになっている。
首都高のような環境でも轍に舵をとられることなく、
揺すりや突き上げもほぼ気にならないなど乗り心地が激変したのは、
まさにフロントサス変更の効能あらかたといったところで、
もはや気になることといえば高速巡航時の風切り音くらいなものだが、
これはデザインとのトレードオフゆえ致し方ないところだろう。

 


メルセデスを名乗るものであればなおのこと、安全や環境といった課題にはもちろん無頓着ではいられない。
しかしこれらとヘビーデューティな性能を両立させることが難しいのもまた確かだ。
新型Gクラスはその葛藤の中で、考えられうる最良の回答を示したのではないか。
しかもそれは単なる対症療法ではなく、ユーザーにとって確実に実利のある進化を伴うものである。
今までGクラスを体験したことのないドライバーにも、
このクルマのドライブフィールは違和感なくしかも新鮮に感じられるに違いない。
ちなみに新型Gクラスは日本でもこの6月6日に発表される予定だ。

メルセデスベンツ・日本
https://www.mercedes-benz.co.jp/

G-class
https://www.mercedes-benz.co.jp/passengercars/mercedes-benz-cars/models/g-class/g-class-suv/individualize.html
渡辺敏史●文

関連記事

ページ上部へ戻る